佐久間:それは2作目が売れる前に、出版界の人たちが読んで、仕事の依頼をくれたってこと?
小川:そうです。売れている小説家って3種類だと思っていて。一つが編集者ウケに関係なく、そもそもとんでもない数の読者がついている人。それから、読者はあまりついてないけど、編集者の中で評判がいい人。あと、書店員にすごく愛されていて、書店員がめちゃくちゃ頑張ってくれて売れる人。つまり、読者に愛されるか、編集者に愛されるか、書店員に愛されるか、その三つのどれかじゃないと絶対生きていけないと思ってます。僕は編集者にウケないとダメなタイプでして(笑)。
佐久間:それ、めちゃくちゃ面白い。自分の書きたいものとか、興味のあるものからして、その3ジャンルの生き残り方だったら編集者ウケだろうって考えたんだ。
小川:そうです、そうです(笑)。
僕は、自分がひねくれてて、世間と乖離(かいり)しているという自覚があって。でもベン図で見たとき自分の持っている興味の円と編集者の持っているそれはすごく近いっていう感覚がある。だから、あとは世間の興味とどこで重なり合うのかなっていうのをずっと探してるんです。
佐久間:その話、本当に共感しますね。僕もテレビ局っていう組織が向いてないってことと、自分が面白いと思うものが視聴率の本流じゃないってことが段々わかってきて、このままだと僕がしたいお笑いをこの組織内ではやらせてもらえないな、と思ったんです。だから、視聴率以外の指標で評価されるものは何かって考えて、コアだけど面白いもののためにはお金を払ってくれる顧客に向き合って一緒にこの文化を育てていこうと。やりたいことがある程度見えてきて、この芸人さんたちとやりたいと思ったときに戦い方を考え始めましたね。何もしないと30代で好きなことできないなって。
小川:確かに「ゴッドタン」とかは視聴率が高い番組というよりも、熱心なファンがついてる番組ですよね。
佐久間:独立しようと思ったときに、番組にコアなファンがついてくれることが多い僕の作風は、おそらくいま競合がたくさん出てきた配信に向いてるなって思ったんです。
小川:なるほど。