審査結果について「納得できない」といった声が出てくるのは、どのコンテストでもあることだ。ただ、『THE W』は特にそういうことを言われやすい。
多様を楽しめれば面白い
いわば、『THE W』というのは、一品ごとに和食・中華・フレンチ・エスニックなどとジャンルがバラバラのメニューが次々に出てくるコース料理のようなものだ。食に対する関心が高い人であれば、1つのコースでいろいろな味わいが楽しめることをポジティブに捉えられるかもしれない。
だが、一本筋の通ったコース料理を期待している普通の人にとっては、まとまりがなく落ち着かないと感じられるかもしれない。もちろん、スタッフはそう思われないように演出面でさまざまな工夫を施しているわけだが、それでも何となく楽しみづらい雰囲気を感じてしまう視聴者はいるのではないか。
画一的なものはわかりやすい。そして、とっつきやすい。年末の風物詩となった『M-1グランプリ』が毎年あれほど盛り上がるのは、それが「漫才」という1つのジャンルだけを扱うものだからだ。出場者にとっては戦いやすいし、審査員にとっては審査しやすいし、視聴者にとっては見やすい。
でも、初めから多様な笑いを受け入れて、それを楽しむ姿勢で見ていれば、『THE W』も実に魅力的で面白い大会である。
注目株キンタロー。など次々敗れ
今年の注目株は、いま乗りに乗っているキンタロー。だった。初めて決勝に進んだ彼女は、矢継ぎ早にさまざまなモノマネを見せるネタを演じてみせた。惜しくも敗れてしまったものの、モノマネ芸人としての貫禄は十分だった。
ぼる塾、おかずクラブなどの有名どころも次々に敗れていく中で、激戦を制したのはフリーランス芸人のにぼしいわしだった。彼女たちは4度目の決勝で悲願の優勝を果たした。漫才は不利だという定説があるこの大会の決勝で、漫才を2本披露してチャンピオンになったのは史上初の快挙である。
多様な食材から良い出汁が出る。『THE W』は女性の大会ではなく多様性の大会であるということがもっと広まれば、そのイメージも変わるのではないか。(お笑い評論家・ラリー遠田)