
女性自身は中学受験を経験し、トップクラスの国立大学を卒業した。海外での仕事の経験も長く、異文化への理解も深い。子どもの教育にも関心が高く、長男を世界の様々な国の文化を英語で学べるプレスクールにも通わせてきた。
それでも「いわゆる伝統校だから」「内部進学でエスカレーター式に大学に進学できるから」といった理由では、子どもの志望校を選ばなかった。
「子どもには自分がやりたいと思ったことをとことんやってほしい。そのために画一的ではなく、新しいことにどんどん挑戦させ、学ぶことを楽しいと思わせる教育を提供してくれそうな学校を選びました」
この選択をした理由のひとつには、首都圏を中心に過熱する中学受験を避けたいという思いもあったという。
2023年10月の東京都教育委員会の発表によると、同年春の都内公立小学校の卒業生が都内の私立中学校に進学した割合は19.81%。自治体別で最も高かったのは文京区で、49.5%に上っている。中学受験の大手塾の中には人気のあまり、4年生からでは入れない校舎もあるほどだ。
「私たちのころの中学受験とは全然違っていて、1年生から大手塾に入る子も多いと聞きます。偏差値や学歴は、社会で生きる上で何らかの保証にはなるかもしれないけど、それだけでは生きていけません」
女性は、そうした思いから、小学校受験の志望校を決めたという。
(ライター・浴野朝香)
※AERA 2024年12月16日号より抜粋