「この判決を契機に未来にできることをしていきたい」(ボラ監督)

 ベトナム人が韓国政府を訴えたこの裁判は、日本植民地下で日本軍に軍人として駆り出された韓国人とその遺族による日本政府に対する賠償請求裁判と、国を跨いだケースとして似た構図であるが、その原告法定代理人である大口昭彦弁護士はこう解説した。

「日本は歴史教育も含めてアジアの侵略問題を清算出来ずに来たことで、いまだに司法も戦後賠償に向き合えていないが、韓国は分厚い民主化運動の成果で、自国の裁判所が当時の民兵の証言などから、軍による虐殺の歴史も認めてその加害性をきっちりと裁いた。これは学ぶべきことだ」

 韓国政府は一審判決後、すぐさま控訴。ベトナム外務省はこれを遺憾と表明。一方、韓国の弁護士たちはタンおばさんの支援を継続していく。「こういう問題は外交問題ではなく歴史の問題としてケリをつけていくべき」と大口弁護士は語った。(ノンフィクションライター・木村元彦)

週刊朝日  2023年4月21日号