全国転勤を断って結婚
「なんか日々に流されて続けていたんです。逆に言うと、ダラダラ継続しちゃう。適応するべきでないところでも、適応しちゃうみたいな。結婚もそういう感じで、ダラダラしてしまったし」
18歳から付き合っていた彼との結婚も、会社の事情が絡んでいたらしい。
「入社したときは全国転勤が当たり前だったんですが、このままだとずっと異動し続けることになるし、途中から転勤なしの希望を出せる制度がはじまったんです。でも、そうすると給料はかなり下がるし、住宅補助も出なくなるんですね。自分のキャリアとか生活に関わってくることだから、結婚するかしないか決めてもらわないといけない。男性側はダラダラしていられるかもしれないけど、私の社会的な状況はそうじゃないからね!って。あのときは、気持ち的にも荒れていましたね」
その結果、全国転勤を断って結婚することになったという。
「だからプロポーズも当然ないし、結婚式もない。事務的に決めたことで、ロマンチックなものは何もないですよ」
徹夜で棚卸し、翌日に流産
それから、10年ちょっとが経つ。
「30代で結婚して、最初は子どもをどうするかという話もしないし、夫からも言われない。友だちの子どもは可愛いと思うけど、自分がほしいかと言われるとどっちでもないみたいな気持ちでした。仕事が忙しかったし、まだ考えなくても大丈夫だと思って余裕ぶっていたんですね。だけど、コロナ禍前くらいに、初めて夫婦で子どもをつくろうかという話になったんです」
美里さんはすぐに妊娠したという。
しかし、仕事は相変わらず多忙だった。
「妊娠初期で、まわりにも言えなかったんですよね。徹夜で棚卸しをしていたら、その翌日に流産しました。トイレで大量出血したときは号泣しましたけど、妊娠初期はよくある話だというのを聞いて、なるほどねって納得しました。子どもには、せっかく来てくれたのに申し訳ないなと思います」
その後、またつくろうという話も夫から出たというが、美里さんにはまた流産してしまう不安があった。気持ちの整理がつかないままコロナ禍に入り、妊娠を控えていたところに、今度は病気が見つかったという。
「おなかが痛くなって産婦人科に行ったら、結構大きい子宮筋腫が見つかって開腹手術をしました。術後1年程は、妊娠を控えたほうがいいみたいで」
そうこうしているうちに、今度は夫の転勤が決まった。夫婦で一緒にいたい気持ちから、夫は会社を辞めることも考えたようだが、結局は別々に暮らすことになったという。
「良くも悪くもタイミングがない。自然の流れで子どもは『もういいよね』みたいになりました」