現代日本に生きる女性たちは、いま、何を考え、感じ、何と向き合っているのか――。インベカヲリ☆さんが出会った女性たちの近況とホンネに迫ります。
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新卒から正社員で20年
書店員として働く美里さん(44歳/仮名)は、よく笑う朗らかな女性で、いかにも「順当に生きてきた人」の雰囲気があった。
「新卒から、ずっと同じ会社で働いています」
サラリと出てきたその言葉に、私は思わず「珍しいですね!」と言ってしまった。
「同世代だと、まだいるほうですよ。下の世代だと、キャリアアップとかでガンガン辞めますけど」
これは環境の違いというものだろうか。
同じロスジェネ、氷河期世代の私のまわりでは、入社した先がブラック企業だったり、倒産したりして、転職経験のある人のほうが圧倒的に多い。派遣社員や契約社員のため、契約更新ができずに職を転々とする女性もいる。新卒から正社員で20年以上働き続けている女性など、初めて会ったと言ってもいいくらいだ。
だが、次いで出てきた言葉に、私はまたも「そんな人いるんですね!」と叫んでしまった。
「夫は高校生のときに、17歳で付き合った人なんです」
……なんて平和な世界だろう。
「しかも、ちょっと気持ち悪いと思うんですが、初彼なんです。そのまま結婚したから逆にヤバイですよね」
私が派手なリアクションをしてしまったからか、美里さんは謎の卑下をはじめるのだった。
異動のたびにマンスリーマンションへ
美里さんが書店に就職したのは、やはり本が好きだったからだという。
だが、順当に生きてきたように見える美里さんも、社会に出てからは荒波だった。全国チェーンの書店では転勤が多く、異動のたびに近くのマンスリーマンションに引っ越す生活がはじまったのである。
「会社に合わせた生活ですね。新店がオープンするときなんかは、帰りが0時になるので、寝に帰るだけみたいな。ワンルームのロフトに寝床があるけど、布団まで辿り着けないほど疲れていて、床で寝ているときもありました。忙殺されていたので、20代の記憶は曖昧です」
それほど過酷な職場で、20年以上働き続けているのだからすごいことだ。
適応障害やうつ病で休職する人もいるが
同期で辞めていく人はいなかったのだろうか。
「退職していく社員は比較的少ないと思いますが、毎年、適応障害やうつ病で短期間休職される方はいます。私もたまたま病院にかかっていないだけで、行けば軽い病名は付けられそうな気はしますね」
体を壊すギリギリまで、つい働いていしまう、これも氷河期世代の特徴なのか。若い世代は、そこまで頑張らないように思う。