このパビリオンの内部や庭園を覆う赤い色は、僕の子供時代に空襲で夜空が炎で真っ赤に染められた光景の記憶です。したがってここでの赤は死と生の両義性を共有しています。ここまで読んでいただいた方で、ぜひ現場に足を踏み入れてみたいと思われた方がいらっしゃれば騙されたと思って、瀬戸内海に浮かぶ豊島に足を伸ばして、ぜひ「豊島横尾館」に行ってみて下さい。行って下さる方に過去完了形で先にお礼を申し上げます。「どうもありがとうございました」

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰

週刊朝日  2023年4月21日号

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横尾忠則

横尾忠則

横尾忠則(よこお・ただのり)/1936年、兵庫県西脇市生まれ。ニューヨーク近代美術館をはじめ国内外の美術館で個展開催。小説『ぶるうらんど』で泉鏡花文学賞。2011年度朝日賞。15年世界文化賞。20年東京都名誉都民顕彰。

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