「社会って自分たちが作るのか、誰かに与えられるのか? その違いは大きい」(撮影・佐藤創紀/朝日新聞出版写真映像部)

「30年前と比べて、僕らの生活って変わりましたよね。新聞の発行部数は減りましたが、ネットで情報を簡単に得られるようになりました。

30年前はレンタルビデオ店でビデオを借りていましたが、今ではネットフリックスなどで好きなコンテンツを楽しめます。SNSもグーグルマップも米国の会社が運営しています。

米国では新しい会社が次々と設立され、次々と新しいものを生んできたんです。

成熟したからと決めてかかった日本との大きな違いです。新しい挑戦をする人が少なかったし、出る杭は打たれる文化だったのかもしれません」

「人」という切り口を強調し、田内さんはこんな例え話をした。

「部活動で使う部室が汚れていると想像してください。

誰かが掃除しなくちゃいけませんよね。自発的に掃除する生徒がいなかったら『当番制にしてみんなで掃除しよう』って誰かが言ったりするでしょう」

「誰かが」掃除しなければ、汚部屋のまま。

「今の日本では、お金を払えば誰かが掃除するんでしょ、って雰囲気です。

お金で解決するにしても、『お金を出してくれれば掃除しますよ』と言ってビジネスをはじめる人がいないと成り立ちません」

 田内さんのもどかしい気持ちが伝わってくる。

「日本社会も部室も同じです。みんなが傍観者になって、そのうち変わる、誰かが変えてくれると思っていたら何も変わらない」

日本は9カ国で最下位

 田内さんは日本財団の「18歳意識調査」から引用した。若者が何を考えているのか、日本を含む世界各国の若者にネットで尋ねるアンケート調査である。

「5年前は『自分は責任がある社会の一員だと思う』に『はい』と答えた人が44.8%。

『自分で国や社会を変えられると思う』は18.3%。9カ国調査の中で最下位です。

米国は『責任がある社会の一員』が88.6%、『社会を変えられる』が65.7%。中国は前者が96.5%、後者が65.6%でした」

 ただ、嘆くことばかりでもないようだ。

「今年の同じ調査では、日本が最下位であることは変わりありませんが、『責任がある社会の一員』が61.1%、「国や社会を変えられる」が45.8%に増えているんです。

若い世代は、このまま上の世代と同じことを続けていてはまずいと思っているのかもしれません」

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