「日本代表の強化を考えた場合、二人がイタリアに行くことは必要なことでした。セリエAのレベルはオリンピック前の時点では世界ナンバーワンでした。そこで強烈なサーブを日常的に受け、スパイクを打つにあたっては、2メートルを超える選手たちのブロックと対峙しなければならない。ふたりは着実にレベルアップし、それを日本代表に還元してくれました」
将来、男子日本代表が1972年のミュンヘン・オリンピック以来のメダルを獲得するためには、数年かけてセリエAとのギャップを埋めていかなければならない。そのためには、日本の若手の成長を促すだけでなく、世界の一流選手たちを呼び込める資金力をSVリーグの各チームが準備できるかも大きな鍵となる。
中長期的に見て、円安が続けば、海外の選手たちに払う年俸は割高となり、こうした経済要素も考慮に入れなければならない。
また、SVリーグの特徴として、女性ファンが多いことが挙げられる。大河氏はこう話す。
「Bリーグも女性と若者をターゲットとしていますが、バレーボールの場合は、熱心な女性ファンが多いことに驚きます。試合開始1時間前から着席していることも珍しくありません」
バレー部員は増加
70年代から男子バレーには“推し活”的なものが存在したが、それが令和の時代を迎えた現在、大きく跳ねている印象だ。今後は、ファミリー層などにも浸透を図りたいという。
そのために必要なのは、快適な観戦環境の提供だ。Vリーグ時代は、企業の応援団が応援の音頭を取ることが多かったが、そうした母体を継続しつつ、新たなファンベースを拡大していきたい。いま、全国各地で新しいアリーナがオープンしているが、バスケットボールのBリーグがビジネスの面では先行している。ふたつの競技がお互いを敵視するのではなく、刺激し合うことが求められる。
他競技に比べ、バレーボールの未来は明るい。「週刊少年ジャンプ」に連載されていたマンガ『ハイキュー!!』の影響で、男子バレー部員はこの10年間で増加している。SVリーグが、憧れの舞台になれるかどうか、リーグの舵取り、各チームの戦略の強化が求められる。(スポーツジャーナリスト・生島淳)
※AERA 2024年11月25日号