〈日本人の大半は、政治家のことが好きではないのだと感じます。付け加えるなら、この空気が、日本の政治をより良い方向に進ませることを困難にしているのではないかとも……〉。いきなり本質を突く発言。松田馨『残念な政治家を選ばない技術』の副題は「『選挙リテラシー』入門」。選挙プランナー歴10年の選挙のプロが語る、いわば投票の極意である。
 といっても主張はきわめて真っ当。政治家は〈私たちの代理人であり、いうなればゲームにおける「アバター」のような存在です〉と著者はいう。〈自分に似たキャラを選んだり、なるべく理想に近い造形になるようカスタマイズしたりするように、政治家のことも「自分自身を選ぶように」見るべきだと私は思います〉。
 なるほど、それはいい選択基準かもしれない。逆に〈「選挙で勝つこと」だけにとらわれている政治家を、まず私たちの一票で払い落としていく必要があります〉。
 選挙は1回だけでは終わらない。何度も続いていくのだ、というのが本書の重要な指摘である。
 政策の隅々まで熟知していなくても〈「なんとなくこの人は感じがいい」/「この人のチラシの、この文章にはなんとなく共感できる」/そういった、あなたの勘をまずは大切にしてください〉。で、なぜそう感じたかを探る。〈その過程こそが、あなただけの「わかる」をつくるのです〉。
 自分の票はいつも死に票だと嘆く人にも〈「投票が無駄になる」ということはありません〉〈負けた選挙であっても、候補者は皆、投じられた票のことを大切に胸にしまって帰り〉〈「次こそ頑張れ」と声をかけてくれる有権者に対して心から感謝を抱きます。こうしたすべてが、彼もしくは彼女を育てることになります〉。
 地方選を含めると年に約900回。毎週どこかで選挙が行われているという日本。生涯に換算すると18~80歳で国政選挙44回、地方選を含めれば104回。今度負けたらもう終わり。そんな思い込みから脱することが、最終的な「勝ち」への道なんですよ。

週刊朝日 2016年7月15日号