住居から通勤する「就業の場所」は、業務を開始・終了する場所のことです。通常は、会社や工場などになるでしょう。ただし、ルートセールスの営業マンが訪問先に直行・直帰している場合などは、最初の訪問先から最後の訪問先までが就業の場所になります。

 その就業の場所と住居の間の「合理的な経路および方法」とは、一般的に用いられている経路・方法と考えて差しつかえありません。JRでも地下鉄でも行けるなど2つ以上の経路があるときは、どちらも合理的な経路と認められます。

 当日が列車事故で別の路線を使った、マイカー通勤で近くの駐車場にとめてから歩いて通勤するなど、やむを得ずに通る経路も合理的な経路のうちです。ただし、理由もなくわざわざ遠回りすると、合理的な経路になりません。

 交通手段については、通常用いられる電車・バス・自動車・自転車・徒歩などであれば、「合理的な方法」と認められます。

●飲み屋に行った帰りは「通勤」じゃなくなる?

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松島先生:つまり、普通にやってれば「通勤」と認められないことは、あまりないということですね。それより、「通勤から除く」とされているほうが重要です。たとえば田中社長は、ときどき休日に緊急事態で呼び出されたりしませんか?

田中社長:たまに、印刷トラブルで休日に呼び出されたりしますね。

松島先生:佐藤さんは、会社の帰りに映画を見たり、ちょっと飲んで帰ったりするでしょ?

佐藤さん:それくらいは、しますけど……。

松島先生:そうすると、通勤でなくなったり、通勤の範囲が短くなったりするんですよ。

「業務の性質を有するもの」は、通勤から除くとされています。具体的には、会社が通勤用のバスを用意し、従業員がそれで出退勤している場合、あるいは緊急の用件で休日に呼び出しを受けて出勤する場合などです。これらの場合は、通勤災害になりません。業務の性質を有するので、業務災害です。

 また、会社の帰りに映画館に寄ったり、居酒屋でお酒を飲んだりすると、「往復の経路を逸脱し、または中断した場合」にあたります。逸脱とは、就業や通勤と関係のない目的で合理的な経路をそれること。中断とは、通勤経路上で通勤と関係ないことをすることです。通勤の途中で逸脱や中断があると、その後は原則として通勤でなくなります。

佐藤さん:飲み屋に寄ると、その後は通勤でなくなるのか。家にはまっすぐ帰りましょう、みたいな感じですねえ。でも、帰りに深夜営業のスーパーで、切らしたシャンプーを買うくらいなら大丈夫ですよね?

松島先生:大丈夫です。なお、逸脱・中断しても、その後が通勤になる例外があります。わざわざ「逸脱・中断の例外」として法令で定められているんですよ(※1)。

田中社長:私はクルマで通勤しているんだが、交通事故でも通勤災害になるのかね?

松島先生:要件を満たしていれば通勤災害になりますよ。交通事故でも(※2)。

※1 逸脱・中断の例外…法令に定められた行為は5つで、概略は次のとおり。(1)日用品の購入など、(2)特定の職業訓練、教育訓練など、(3)選挙権の行使など、(4)病院などで診察や治療を受けることなど、(5)特定の親族の介護

※2 交通事故の労災保険適用…自動車事故の場合は、自賠責保険の保険料と二重の給付にならないよう支給の調整が行なわれる。ただし、相手の責任による交通事故などでは「第三者行為災害」として届出等が必要。

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