愛子さまが育てている蚕からとれた繭=2022年6月16日、皇居・御所、宮内庁提供

 小石丸は外国産の繭よりひと回り小さく生産性が低かったために、外国産の繭に押されて一般では生産されなくなった。しかし、美智子さまは小さく愛らしい日本の繭が姿を消すことを惜しみ、紅葉山御養蚕所で大切に育ててきたという。
 

 一方で小石丸は、重要な役目を果たしている。その一つが、皇居でつくられたこの絹を使った、正倉院の宝物の古代絹織物の復元事業だ。

 聖武天皇の遺愛品である「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」の弦や、奈良時代の舞楽装束「笛吹襪(ふえふきのしとうず)」を復元する材料として、小石丸の絹糸が用いられたという。
 

育てた蚕は愛子さまの装束に

 さらに小石丸は、身位の高い内廷皇族の衣装にも使われている。

 愛子さまが数えで5歳を迎えた年の元日。愛子さまは「御地赤(おじあか)」の着物を身に着けた。

 着物を作った「染の聚楽」代表の高橋泰三さんが、こう話す。

「御地赤とは、天皇陛下の直系の女性皇族である内親王方が成人になるまで、元日など節目となる日に身につける宮中の伝統的な着物です。上品な朱赤の絹地に、松や梅などおめでたい柄の刺繍が金糸で施されています」

 御地赤を依頼したのは、当時皇后だった美智子さま。仕立てる絹の生地は、宮内庁から届いた。小石丸からつくられた生地だった。

 さらに2006年11月、愛子さまは一般の七五三に当たる「着袴(ちゃっこ)の儀」に臨んだ。上皇ご夫妻から贈られた袴にも、この小石丸が使われたという。

 泰三さんは、過去に秋篠宮家の長女小室眞子さんと次女の佳子さまの御地赤もつくったが、小石丸の生地が渡されたのは愛子さまの御地赤のみという。

「同じ内親王でも、内廷皇族である愛子さまの御地赤は別格の扱いでした」
 

皇后の祈りの参拝服にも

 小石丸の繭で紡がれた絹は、皇后の参拝服にも用いられる。

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「別格」の服にも