子どもに政治は判断できない。中高生に政治は早すぎる。〈こうしたおとなの決め付けが、若者の政治離れを促進させているのではないだろうか〉と述べるのは林大介『「18歳選挙権」で社会はどう変わるか』。〈おとなは、子どもを子どものままに扱うのではなく、少なくとも成人するまでに、「子どもを市民にする」「子どもをおとなにする」という意識を持って、子どもと接するべきである〉と説く政治教育論である。
18歳選挙権の意義のひとつは、「生きた政治」にふれる機会が子どものころからもてるようになることだ。海外では子どもたちの主権者意識を育てる「民主主義教育」「シティズンシップ教育」が盛んで、アメリカでは大統領選の際に未来の有権者による模擬選挙が行われる。幼稚園から小学校、中学校、高校まで含め、その規模、700万人以上! 5歳の子まで参加するっていうのがすごい。
ひるがえって日本では、しばしば「政治的中立性」の壁が立ちはだかる。政治や選挙のしくみは教えても、〈各政党の政策の中身や考え方については触れない、あるいは、憲法改正や安保法案といった実際に政治的・社会的に対立する課題については、簡単に説明をすることはあっても踏み込んだ議論は控える〉。だから政治に興味を失っちゃうのよね。
実際の選挙にあわせて模擬投票の準備を進めていた公立中学に教育委員会が中止を命じたり(09年/東京都江戸川区)、実際の政党を題材に模擬選挙を予定していた公立中学に教育委員会から指導が入って架空の政党名にしたり(13年/青森県弘前市)、安保法案についてグループ討論し賛否を投じるという県立高校の授業が県議会で問題となり、教育長が謝罪したり(15年/山口県)。民主主義を学ばなくちゃいけないのは、むしろ大人たちみたい。
18歳選挙権は、こんな風土に風穴を開ける契機になるかもしれない。〈そもそも子どもは、有権者ではなくても主権者であり、市民であり住民である〉っていう原則を忘れちゃいけません。
※週刊朝日 2016年7月8日号