世界選手権3連覇中の坂本花織は、今季も難しいプログラムに挑戦している。
グランプリ(以下GP)シリーズ第4戦・NHK杯(11月8~10日、国立代々木競技場第一体育館)で優勝した坂本は、GPシリーズ第2戦・スケートカナダに続く連勝でファイナル進出を決めた。坂本の今季フリーは、振付を担当したマリー=フランス・デュブレイユ氏が選曲した『All That Jazz』。ミュージカル映画『シカゴ』の冒頭を飾る華やかなナンバーに乗り、坂本は最初から最後まで休むことなく動き回る。
NHK杯の前日練習後、メディアに対応した坂本は、『All That Jazz』は体力を消耗するプログラムだと語った。
「(2019-20、2020-21シーズンのフリー)『マトリックス』に並ぶぐらいきついですけど、『マトリックス』の時は21歳だったので。やっぱり3年も時が経つと、(体が)いうことを聞かなくなります」
『カオリックス』とも呼ばれた『マトリックス』は坂本の代表作だが、2019-20シーズンだけでは完成せず、2シーズンかけてようやく自分のものにしたプログラムでもあった。難しいプログラムから逃げず、時間をかけて滑り込んできた過程が、今の坂本の強さを作っているのだ。
振付だけでもハードな『All That Jazz』で、坂本はジャンプの構成においても新たなチャレンジをしている。長年エッジエラー判定に悩まされてきたルッツを二回組み込み、ダブルアクセル―オイラー―3回転サルコウという新たな連続ジャンプにも挑む。当然たやすく仕上がるプログラムではなく、スケートカナダでは2度転倒している。しかし、来季のミラノ五輪を見据える坂本は、五輪シーズンの選択肢を増やすため、今季はあえて自分に負荷をかける選択をしたのだ。
NHK杯でショート首位に立った坂本は、フリー当日の公式練習で3回転-3回転の連続ジャンプを跳んだ際、転倒した。
「その時に、ちょっとスピードを落として守りに入って、失敗したので。『今日は守りに入らない方がいいな』ということを、練習で感じられた」