ハリスのスタッフ43人が辞めた
日本ではあまり報じられていないが、彼女は私的な会話では、いわゆるfour-letter word(4 文字からなる卑猥な単語: fuck, cunt, shit など)を連発することは、アメリカではよく知られている。けれども、公的な立場では絶対にfour-letter wordを言わない。
ただし、ハリスは、公表されているハリスのスタッフの47人のうち43人が辞めている。「パワハラ」といっても過言ではない口調で、スタッフを問い詰め、その様子を目撃して辞める人もいたという。かつて検事であったことから来ているふるまいかもしれないが、トランプがプライベートで示した「協調性」とは対極にいるといっていい。
ビジネスマンのバックグラウンド
マッケンティー氏:政治についてはアウトサイダーであることが、トランプに他とは異なる視点を与えていたのだと思います。トランプは不動産業やテレビ界を席巻した人物です。その人が政治という新しい分野に挑戦し、しかも今までにない独自の方法で取りかかっている姿を見るのは、楽しく刺激的なことでした。明らかにビジネスマンのバックグラウンドがあったからこそ、「戦略的に暴言を吐く」という新しい戦略を選んで、奏功したのだと思います。
――トランプは「権威主義的である」とみている人は多い。実際はどうだったのか。
マッケンティー氏:権威主義的ではまったくありませんでした。1期目にはトランプのアジェンダに反対する人が政府にたくさん入っていました。もし彼らがもっとトランプと協力する気があれば、この国はもっとよくなっていたでしょう。私は、トランプが自分に反対する人に対して、権威主義的な態度をとっている姿を見たことがありません。
「クレイジー」であることの有効性
――トランプは「予測不能(unpredictable)」ともいわれるが、実際はどうなのか。
マッケンティー氏:その通りですが、トランプの予測不能性は長所として作用していると思います。いま、ウクライナやガザで戦争が起きていますが、もしトランプが大統領だったなら、起きていないと思います。トランプがどう出るか、予測がつかないからです。
――歴史学者のニーアル・ファーガソン氏は、政権内部の人間から直接聞いたとして、筆者にこう話した。トランプは2022年、「自分が大統領であれば、プーチンはウクライナに侵攻していなかっただろう。『ウクライナを攻撃したらモスクワを爆破する』とプーチンに言ったからだ」と言ったのだという。
「トランプは、リチャード・ニクソンが最初に説いた『マッドマン・セオリー』(狂人理論)を象徴するかのようだ。もし相手が私をクレイジーだと思えば、相手の計画や行動を抑止できるという理論であり、戦略である。実際にトランプが大統領だった期間、ロシアも中国もアグレッシブな立場を一切取らなかったのである。みごとに『マッドマン・セオリー』の有効性が証明された」(ファーガソン氏)
(ジャーナリスト・大野和基)
※文中一部敬称略