物価高や円安、金利など、刻々と変わる私たちの経済環境。この連載では、お金に縛られすぎず、日々の暮らしの“味方”になれるような、経済の新たな“見方”を示します。 AERA 2024年11月11日号より。
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ユーチューブのコメント欄で、教育に一番重要なことを教えてもらった。「若者です。」から始まるその投稿を見たのはしばらく前のことなのだが、講演につかう資料を作りながらその重要性を改めて実感した。
今回、僕が基調講演を依頼されたのは、J−FLEC(金融経済教育推進機構)が主催する金融教育イベントだった。J−FLECは、今年発足したばかりの官民一体で金融教育を推進する団体の略称だ。金融教育とは、「お金や金融の仕組みを理解し、それを通じて自分の生活や社会全体の在り方を考える力を育む教育」とされている。つまり、個人の生活だけでなく、社会全体についても考える力を養うことが目的だ。
2022年からは高校でも金融教育が必修となり、カリキュラムも新しくなった。家庭科では「自分の生活」の視点から、社会科では「社会全体」の視点からお金について学ぶようになったのだ。
このように本来は幅広い範囲をカバーしている金融教育なのだが、実際には「自分のお金をどう増やすか」という部分ばかりに焦点が当てられている。
特に資産形成や金融商品の知識ばかりが強調され、この偏りは問題だと以前のコラムでも指摘した。J−FLECには全国銀行協会や日本証券業協会も参加しているので、金融商品を売り込む方向に偏らないか心配していた。しかし、実際に話をしてみると、むしろ銀行や証券会社の関係者たちが「金融教育=資産形成の勉強」という誤解を避けたいと考えていることが分かり、安心した。