「貧乏マウント」は、自分が経済的に苦しい状況にあることを強調して、相手に対して優位に立とうとする行動や態度を指すのだそう(写真:Getty Images)
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 日常に蔓延する「マウント」。取るのも、取られるのも避けたいところだ。しかし、親しみを込めた「マウント」には、コミュニケーションのヒントもあるという。AERA 2024年11月11日号より。

【イラスト】あなたの身近にもこんな光景ありませんか?

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都内のホテルのロビー。8千円のランチビュッフェを食べ終えたマダム風の女性3人組の、こんな会話が耳に入った。

「うちの夫が貧乏マウントをとってくるので困っているのよ。『自分は毎日、職場近くのスーパーの500円弁当を食べているのに』って……」

 夫にすれば、妻とのランチ格差にあきれて、つい出た言葉だったのだろうか。それとも、妻のホテルランチが頻繁だった場合、出費の多さをやんわり戒めたかったのかもしれない。

アシックスの靴で嫌み

 それはともかく気になったのは、「貧乏マウント」という言葉だ。ネットで調べると、自分が経済的に苦しい状況にあることを強調して、相手に対して優位に立とうとする行動や態度を指すのだそう。

 例えば、「月15万円の収入だと生活できない」というSNSの投稿に対して、「私はもっと収入が少ない時期がありましたが、普通に生活できました」というコメントを送る人がいる。子どもにアシックスのシューズを履かせて保育園に行かせると、別の保護者から「金持ちは違うなあ」と嫌みを言われる、といったパターンもあるという。

 深刻なのは、生活保護受給者や非正規労働者のネット上のSOSの声に対して、「自分のほうが貧乏だ、甘えるな」という貧乏マウント的なコメントで貧困問題を打ち消し、当事者をさらに苦しめるケースだ。

「ツイッターは貧乏マウントばっかり。インスタグラムは金持ちマウントばっかり」というXの投稿もあった。なるほど。とはいえ、せめて周囲の人とは、金銭感覚をめぐってギスギスしない関係を築きたいものだ。

 そこで思い出したのが、「安物買い自慢」だ。「自分はこんなに安い買い物をした」とアピールし合う文化が、とりわけ関西の「おばちゃん」たちの間に浸透している。この低みから自慢している感じは「貧乏マウント」と似ているのだが、相手を非難する意図は全くない。この違いはどこにあるのか。

親切心みたいな気持ち

 というわけで、大阪在住歴が半世紀余に及ぶ50代女性に話を聞いた。

「安物自慢? そりゃ普通にしますよ。この服、安かってん、みたいなことは、仕事終わりで私服に着替えている時とかに職場の仲間に言いますし。特に多いのは、スーパーで安い食材が買えた時かな。とりあえず誰かに報告したくなりますね」

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自慢とかではなくて、親切心みたいな気持ちかな