「禁煙」改革を始めた阪神・藤川球児新監督
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 阪神が高知県安芸市で開催している秋季キャンプ初日の11月1日から、チームで活動している時の「全面禁煙」を導入して話題になっている。藤川球児新監督の意向もあったという。

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 報道によると、来季は甲子園のクラブハウスなどから喫煙スペースがなくなり、ビジター球場でも同様のルールが適用される。ただ、遠征の際の宿舎滞在時やプライベートの時間に関しては、適用されないという。

 プロ野球界で全面禁煙を導入したのは阪神が初ではない。ロッテが2020年から両リーグを通じて初めて全面禁煙を導入し、日本ハムも全面禁煙を徹底している。医学的には、喫煙することで呼吸機能、筋力、瞬発力、持久力が低下し、筋力トレーニングの効果が落ちるというデメリットはすでに常識だ。

精神安定のためやめられない

 ただ、プロ野球界では、いまだに「喫煙文化」が浸透している現実がある。

 スポーツ紙デスクは「名前は出せませんが、球界を代表する選手たちの多くは吸っています。投手より野手のほうが多いです。打席が回ってこないイニングの合間に吸ったり、試合後は一服してから取材に応じたり。我々マスコミも、喫煙所が選手やコーチから情報を得られる貴重な空間でした」と振り返る。

 他球団でプレーする30代の選手は苦笑いを浮かべる。

「ウチの球団で『全面禁煙』は絶対に無理だと思います。球団フロント、首脳陣に愛煙家が多いですから。一昔前は選手もみんな吸っていましたね。なぜタバコを吸うのか? うーん、精神安定剤に近い感覚ですかね。数年前に禁煙していた時期があったんですけど、続きませんでした。手持ち無沙汰で落ち着かなくて。成績も良くなかったのでまた吸い始めました。生活のスペースに全面禁煙の場所が増えて不便になっていますが、やめるきっかけが見つからないですね」

 2000本安打をマークし、日本代表としても活躍した球界OBも、現役時代は喫煙者だったと話す。

「プロに入団した当時、先輩たちがみんな吸っていたし、喫煙が自然な流れでしたね。野手は全力疾走する距離は長くて三塁打までで、走り続ける持久力がなくても大丈夫だという考えがありました。科学トレーニングが全盛になって、タバコが身体に及ぼす悪影響を勉強したら、完全に間違った解釈だったと気づいたんですけど、やめられなかった。打率が毎試合上下動する世界で、現役時代はすごくストレスを感じていました。タバコを一服することで心を落ち着かせていた部分はあったと思います。現役を退いた今は完全にやめましたよ。ご飯もおいしく食べられますし、疲れからの回復力も上がった感覚があります」

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禁煙を訴えて異端扱いされた選手がいた