パ・リーグの関係者もこう語る。
「私も昔はヘビースモーカーだったので、タバコを吸う選手の気持ちは分かるんですよ。タバコを手放せない選手は健康面のリスクは理解しつつも、精神面でストレスを抱えるのが嫌なんだと思います。1軍で結果を出している選手に禁煙の重要性を力説しても、なかなか耳を傾けてもらえない。入団した時から禁煙が当たり前の環境を作らないと難しいと思います」
禁煙を訴えて異端扱いされた桑田真澄
過去に、喫煙が健康に及ぼす害を訴える選手がいなかったわけではない。その先駆者と言えるのが、巨人でプレーしていた桑田真澄氏(現巨人2軍監督)だ。1985年の入団当時は球団の移動バスが1台のみで、喫煙者も一緒に同乗していたため、タバコの煙が車内に充満していた。桑田氏は禁煙や分煙の重要性を訴え続け、95年からは移動バスが喫煙車と禁煙車の2台になり、ロッカールームも分煙となった。当時巨人を取材していたスポーツ紙の記者は振り返る。
「今でこそアスリートの健康増進のために当たり前の提案ですが、当時は桑田さんが異端児とみなされていた。受動喫煙という言葉も知られていない時代だったので、一部のベテランは『おれたちが勝手に吸ってるだけで、迷惑を掛けているわけないだろ』と不満をあらわにしていた。でも、桑田さんに影響を受けて禁煙車に乗る選手が徐々に増えました。あれから何十年も経っているのに、全面禁煙を導入しているチームが3球団しかない。世間の感覚からすれば不思議かもしれません」
巨人の原辰徳前監督も「禁煙推進派」で知られた。過去には坂本勇人、岡本和真ら主力選手にパフォーマンス向上のために禁煙を呼び掛けたこともある。