野村総合研究所(NRI)は2023年2月に「日本人の生活に関するアンケート調査」(15~79歳、回答者3617人)を実施。

 その中で推し活を「生活者が特定の対象に対して、応援したり、夢中になっている活動」と広義に定義し、家族共通の推し活と幸福度の関係を整理したところ、家族共通の推し活がある人の幸福度(10点満点中8点以上)は48.8%であるのに対し、個人の推し活はあるが、家族共通の推し活はない人の場合は30.2%と幸福度が大きく減少するとの結果だった。

親子で体験の幅広がる

 東京23区内に住む女性(50)と息子(12)の推しの一つが、女性が通うフィットネスジムだ。特定のコーチを推しているのではなく、ジム全体を盛り上げるための推し活。

 書道師範の腕を生かし筆で書き上げたコーチの言葉や印象的なレッスンの一コマをSNSにアップする時、音楽をつけたり加工機能を駆使するのは息子の役目だ。ジム仲間からの依頼でコーチのポスターや写真パネル、アルバムを作る機会が何度かあり、感想係の息子はジムの人間関係にも精通。家庭でジム話は日常茶飯事で、親子でジム仲間との集まりに参加することも。そんなジム仲間に連れられ、息子は昨年は川遊び、今年は海水浴を初めて経験した。中学受験の志望校にもジム仲間の存在が大きく影響している。

「ジムがなかったら、私は働いていないし、家の中に子どもといるだけで、更年期症状で苦しんでいたかもしれない。息子だって思春期で、受験でストレスが相当たまっていて、こんなに私と会話してくれていなかったかもしれない。だからコーチ推しではなく、ジム推しなんです」

 前出の久保教授が言う。

「親子って、身近な存在だからこそ生でやり合うとしんどいところもある。そういうときも、推しがちょうどうまく媒介してくれる。親だけでは、あるいは子どもだけでは体験できなかった世界にも行ける。親子で体験の幅が広がります」

 仲良し親子ゆえの“親子で推し活”であり、またその逆も言えるのだ。(ライター・羽根田真智)

AERA 2024年11月4日号より抜粋

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