「カーネーション」「ごちそうさん」「あさが来た」――舅役などで味わいを醸し、朝ドラ人気に一役買ったのは近藤正臣だ。
若いころは二枚目として恋愛ドラマでファンを魅了したが年齢とともに渋みが増した。年に3か月は長良川のほとりで風雅にいそしむ。大河ドラマ「真田丸」も佳境を迎え、脇を締める近藤の存在に期待が集まる。憧れのシニアの横顔に迫る!
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●歳を重ねてチャーミング。
岡田時彦、長谷川一夫、上原謙、赤木圭一郎、田村正和……連綿と続く二枚目俳優の系譜に間違いなく連なる人だ。端正な顔立ちでデビュー当時から女性ファンを魅了し続けてきた。はんなりとした色気は今も変わらず。日本人の“粋”を身にまとう稀有な俳優だ。
当時のアイドル的人気について、ご本人は「そんなものはいつまでも長続きしないとわかっていましたから」と、冷静に受け止めていた。「(メロドラマで)同じような役が続けばやっぱり飽きますよ(笑)。相手は変わっても、出会って、好きあって、別れてって。もうやったよ、みたいな多少ふてくされてた部分もありましたね(笑)」。世間に求められる近藤正臣像をどこかで演じている自分がいたという。
近藤正臣といえば必ず話題になるのが、日本のテレビ史に残る伝説とも言われている「柔道一直線」での足でピアノを弾くシーンだ。
「最初の頃はね、いつまで経ってもこれから抜けないのか、という気持ちはありました。いつまで経っても言われて。もう半世紀過ぎてますよ、と。だけど、そこまで経てまだ言われると、『ねこ踏んじゃった』がこんなに長生きしたかと愛おしくなってきます。もう家宝ですね(笑)」
二枚目俳優としての窮屈な時代を経て、近藤は新たな境地を開拓。バラエティの司会やドキュメンタリーのレポーターなど、俳優以外の仕事に挑んだ。さらに世間を驚かせたのは、河童の着ぐるみを着て「60日60日いっぽんぽん」と、キンチョウリキッドのCMに出演したことだ。
「あれは『おもしれー』と思いながらやっていましたね。もういいじゃんって楽しんでやりました。あれを『なんで俺が着ぐるみなんだよ』なんて言ってたら、駄目だったと思う。そんなふうに外からきっかけがくるんです」
以降、二枚目役だけでなく、悪役や老け役なども来るようになり、役の幅が広がった。