ひときわ目を引くのは、本振り袖をお召しの秋篠宮家の次女の佳子さまだ。
未婚の女性の第一礼装である本振り袖に三つ紋を入れた格式の高い着物姿。秋篠宮家の家紋は、十四弁の菊花と秋篠宮さまのお印である栂(つが)の枝葉を四つずつ円形に連ねた意匠である。洗いざらされて薄くなった柿色を表す洗柿(あらいがき)色の生地に、さや形の地紋が入った本振り袖だ。
「さや形は卍(まんじ)つなぎを菱状にくずした意匠で、地模様は日のさし加減や角度によって陰影を楽しむことができます。
優しい洗柿色に金彩を配した雲霞(くもかすみ)の文様。雲は雨を呼び豊作を招く吉祥柄。笹と菊、梅といった吉祥の草花を組み合わせたあでやかな柄行きです。
帯は、肩にかかったはねとふくらみのあるお太鼓が美しい、ふくら雀結びのようです。帯の裏地の緑に合わせた緑の総絞りの帯揚げと朱色の帯締めの配色が全体を締めています」(泰三さん)
園遊会の佳子さまは、雨が小降りになると小まめに傘をたたんでいた。すこし上半身をかがめて招待者と目線を合わせながら、笑顔を絶やすことがなかった。明るく快活、同時に相手への気配りを忘れない優しさが伝わる。
あでやかだが、どこかやさしい色と柄行き。佳子さまのイメージにふさわしい着物の装いだった。
実は、女性皇族の和装でファンが多いのは、常陸宮妃である華子さまだ。
この日は、草花と野鳥を描き出した訪問着に、裏雲取りの菱格子柄を配した帯の取り合わせ。「ひときわ目を引くのが、墨黒色と金の帯。こちらは本当によいお品です」と泰三さんは話す。
華子さまは、旧陸奥弘前藩主の津軽家の出身。若いころからごく自然に和装をお召しだ。2015年の園遊会では、羽ばたくカワセミを描いた訪問着が印象的だった。泰三さんの元にも「着慣れていらっしゃる。さすがは、華子さま」といった称賛の声が絶えないという。
次の園遊会では、女性皇族たちは「洋装」をお召しになる。また、あたたかな笑い声に包まれた場になりそうだ。
(AERA dot.編集部・永井貴子)