無限にある家事や子どもと丁寧に向き合うことができるのも専業主婦だからこそ(撮影/写真映像部・松永卓也)
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 共働き世帯が多数派になる中、“専業主婦は暇そう・お金を稼いでないのは生産性がない”といった世間のイメージに肩身の狭い思いをする人も。自ら専業主婦を選んだ人、そうせざるを得ない人など、「生き方の選択」が本人にできないケースもある。AERA 2024年11月4日号より。

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 専業主婦に対するステレオタイプの押し付けはよく見られる。

「お金という対価をもらっていないだけで、暇なわけではないんです」

 そう話すのは埼玉県に住む女性(40)だ。大学卒業後は商社で営業事務の仕事をしており、結婚、妊娠を経て臨月まで働いて退職した。自身の母親が専業主婦として幸せに暮らしていたため、自身も「自然な流れで」専業主婦になった。

「特に裕福なわけではないですが、働かざるを得ない状況ではないこともあり、いまも専業主婦です。最近はフルタイムで働きながら育児をこなす方も多いですが、私は器用ではないからきっとバタバタしてしまう。だからこの生活がちょうどいいんです」

 そう話す女性だが、専業主婦になることを目指して生きてきたわけではなかった。大学時代に教員免許、秘書検定、簿記検定、ファイナンシャルプランナー、習いごとの師範を取得。今もその気になればいつでも働くことは可能だ。実際、子どもが小学校の高学年になった頃には再就職を検討していたが、折り悪くコロナが流行りだしたため見送らざるを得なかった。以来、仕事を始めるタイミングを見失ったままになっている。

「私は時間をかけて料理やお菓子作りをするのが好きなので、今のようなゆったりした生活が性に合っています。子どもは中学生ですが、一人っ子ということもあり、私が安心感を与えてあげたい気持ちもあります」

 だが、最近は「働いたほうがいいのかも」と感じる場面も増えてきたという。

「テレビや雑誌などメディアを見ていると『働くのが当たり前』という風潮を強く感じます。専業主婦って『暇な人』と思われているみたい。でも私、毎日だらだら過ごしているわけではないんですよ。家のことを頑張っているし、子どもの勉強をみてあげられるように中学校のワークも一通りやっている。友だちや親戚から頼られたときは率先して引き受けるようにしていますし……」

 でも、子どもが大きくなるにつれ、幼稚園時代のママ友たちも仕事を始める人が増え、一緒にランチをできる仲間が減ってきたことを淋しく感じているという。

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劣等感を抱えている