山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
この記事の写真をすべて見る

 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「再発した痔」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

*  *  *

 私ごとですが、最近「痔」を再発しました。ある日の朝、いつも通り排便をしたところ、トイレの便器が血液で真っ赤に染まったのです。その光景を見て、「また痔だ……」と気がついたのでした。

 実は、私はもうかれこれ7年ほど前から「痔」と付き合っています。メイヨークリニック(※1)によると、50歳までに成人の約半数が痔に悩まされることになると推定されているといいます。今回は、なかなか相談しにくい「痔」についてお話ししたいと思います。

 痔は、肛門疾患の中でもよく見かけられる疾患の一つです。アメリカ(※2) では、外来診療でみられる胃腸疾患の中で3番目に多いのが痔であり、年間400万人近くが痔の症状を訴えて診療所や救急外来を受診しているといいます。

 痔は、大きく3つの種類に分けられています。一つ目は、痔の中で最も多いとされている「いぼ痔(痔核)」です。肛門にいぼができるものを指し、直腸と肛門の皮膚部分との境目である歯状線より上にできるものを内痔核、歯状線より下の肛門上皮にできるものを外痔核と分類しています。

 二つ目は切れ痔(裂肛)です。歯状線より下にある肛門上皮が切れた状態のことを意味し、痛みが強く治りにくいため、悪化しやすいといわれています。三つ目は、痔ろうです。肛門周囲に膿がたまった状態が進み、膿が外に出てトンネルができた状態になると痔ろうと呼ばれるようになります。

 痔の症状(※3) としては、出血、いぼの脱出、腫れ、分泌物、痛みなどが挙げられます。痔からの出血の特徴は、排便時の「ほとばしるような」もしくは「ポタポタ落ちるような」出血であり、鮮やかな赤色を呈することが特徴です。

次のページ
私の場合便器の中が真っ赤になるほどの出血