そのひとつ、神奈川県葉山町では、同様の苦情がここ数年続くようになり、昨年も数件寄せられたという。
町には、新しく建てられる住宅に薪ストーブが設置される場合は情報が入る。そのため、移住者には事前に煙などを気にする人が増えてきている点を伝え、周辺住民に配慮するように伝えているというが、
「あくまで声かけにとどまります。たとえ住宅密集地であっても、基準を満たしていれば止めることはできません。葉山では今後、薪ストーブを設置するご家庭が増えていくことが想定されますが、正直、対応に苦慮しているというのが実情です」(同)
環境省の注意書き通り、完全に乾いた薪を使わないと有害な煙を排出するリスクが高くなるが、町内には山が多いため、自分の所有する土地の木を利用し、自作の薪を使用したり、住民に配っている人もいるそうだ。森林の有効活用という意識の高さが災いしてしまっている側面もあるのかもしれない。
「薪を完全に乾かすには、相当に長い時間を要しますので、簡単ではありません。できれば売っているものを使っていただくよう、お願いしたいと思います」(同)
薪ストーブ設置に補助金を出す自治体もある一方で、増えつつある住民トラブル。
トラブルになっても、簡単には引っ越せない。薪ストーブの使用をやめたら、設置費用が無駄になる。無駄なスペースだからと、薪ストーブを撤去するにも、またお金がかかる。
冒頭の自治体の担当者は、こう指摘した。
「薪ストーブによる、エコを推進すること自体は良いことです。一方で、こうしたトラブルと、大げさに言えば隣り合わせであること。また、住環境をめぐるトラブルは双方の意見に隔たりがあり、解決しにくいケースが少なくないということも、設置を検討される方には知っていただきたいと思います」
(ライター 國府田英之)