薪ストーブが人気だ。移住先として人気の土地などで設置する家庭が増えている。この薪ストーブをめぐり、煙や臭いをめぐっての思わぬご近所トラブルが各地で発生している。苦情を受けた自治体も対応に苦慮しているのが現実で、憧れの「ロハス」な暮らしのはずが一転、お隣さんとの終わりなきバトルになりかねない懸念もある。
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都心までのアクセスが良い東京近郊の、とあるベッドタウン。住民から、近隣に引っ越してきた家の薪ストーブの煙や臭いについての苦情が寄せられたのは昨年冬のことだ。
「窓を開けると臭いが入ってくるし、洗濯物も臭くなる。何回改善を求めても、基準にのっとって設置して使用しているだけで何も違反していない、と聞く耳を持たない」
住民は生活環境を壊されたことに怒りつつ、疲れ切っているようにも見えた。
自治体の担当者らが現地に足を運び確認したところ、薪ストーブの使用開始時の10分弱ほど、煙と臭いが確認された。近所の他の住民からも、被害意識はなかったが、影響があるとの事実は確認できた。
「たまにとはいえ、部屋に煙や臭いが入ってくることに、我慢がならなかったのでしょう」と担当者は住民の思いを代弁する。
一方で、設置する際の基準は守られており、なんら法に触れる点はないため、行政として指導する権限はない。
「春が来て薪ストーブを使わなくなったというだけで、トラブルは解決に至っていないんです。この冬も苦情が来ることを想定していますが、行政が介入できる余地がないのが実情です」。担当者は苦渋の表情だ。
首都圏にある千葉県第2の都市・船橋市でも、昨年、市議会で薪ストーブへの苦情をめぐる陳情が取り上げられた。