晩さん会の様子

人生の“金メダル”を頂いた

 食事のメニューは、バジルのムースが添えられた手長エビや、ハーブバターで焼かれたヒラメのフィレのレタス包みなど。料理のプロである佐藤さんは、約170人のゲストたちに同時に提供し、国籍の垣根を超えて満足させる大変さを思いつつ、舌鼓を打った。

 デザートに桃のアイスクリームボムが出て、料理のすべてが終わると、国王夫妻や両陛下が退場し、閉会となった。出席者も次々とボールルームを後にし、誰もいなくなったが、佐藤さん夫妻は遠くから見つめるばかりだった両陛下の席に近づき、「お二人はさっきまでここに座っていらっしゃったんだ……」としばらく感慨にふけっていたという。

 バッキンガム宮殿に招かれ、国王夫妻だけでなく天皇、皇后両陛下とも対面するという、想像もしなかった経験をした佐藤さんは、あまりに“非現実”な一夜をこう振り返った。

皇室の方々は、その広い心でいつも国民のことを思って下さるわけで、尊敬の念しかありません。そういう両陛下と、生涯の時間の一部分を共有させて頂いた感動というのは、とても言葉では表せないですし、人生の“金メダル”を頂いたような感覚です」

 30年前に日本を飛び出し、異国の地で和食文化を発信し続けてきた佐藤さん。【後編】では、男性優位の料理人の世界の中で技を磨き、一流レストランの“ヘッド寿司シェフ”の座につくにいたった、その半生に迫る。

【後編】〈天皇、皇后両陛下と対面した「英国在住の女性寿司シェフ」 孤独の日々を経て“トップ”に上り詰めた半生〉へ続く

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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