首相就任から解散までが戦後最短となった今回の衆院選。国会論戦も深まらず、野党は「裏金隠し解散」と批判している。有権者はどう判断するべきか。神戸学院大学教授・上脇博之さんに聞いた。AERA 2024年10月28日号より。
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マイナス100点がマイナス90点か95点になったにすぎません。
石破茂首相は9日、27日投開票の衆院選では裏金に関連した12人を非公認とするなどと決定しましたが、それを聞いての実感です。
理由は四つあります。
まず、「裏金の真相解明が不十分なこと」です。裏金づくりを、いつ、誰がどんな目的で始めたのか調査がなされていません。しかも今回自民党が行った調査は、2018年から22年分の5年間だけ。安倍派(清和政策研究会)では、20年以上前から裏金がつくられ、麻生派(志公会の前身の為公会)でも17年以前は裏金づくりが行われていたという報道がありました。裏金議員はもっと増える可能性があります。
非公認出そうが「茶番」
二つ目は、「処分の甘さ」。本来であれば裏金に関連した議員には辞職を求めるべきです。それなのに、最も重い処分が離党勧告や党員資格停止なのは処分が甘いと言わざるを得ません。
三つ目は「裏金づくりの防止ができていない」こと。6月に政治資金規正法が改正されパーティー券購入者の公開基準額が「1回当たり5万円超」と当初の20万円超から引き下げられましたが、企業の購入分は誰も確認できないので裏金はつくり放題です。しかも、政策活動費としての支出は「寄付ではない」として許容されていると説明されましたから、まったく期待できません。そして、最後四つ目は、9月27日に行われた自民党総裁選で「裏金議員も投票権を持っていた」ことです。
つまり選挙で非公認を何人出そうが「茶番」に過ぎず、裏金議員に厳しいように見せかけているだけです。その上、石破首相は、非公認議員が今度の衆院選で当選すれば、追加公認する可能性があるとも語りました。場合によっては、政府・党の役職への起用も検討する考えを示唆しています。
そもそも「裏金議員」に注目が集まっていますが、自民党自体が「裏金政党」だと見なさなければいけません。