そのうち、大阪16区(堺市の一部)では、維新、公明、立憲民主の3候補が激しく争っている。この選挙区は公明党の北側一雄元国交相の地盤だったが、北側氏の引退を受け、公明は参院で当選4回とキャリア豊富な山本香苗氏が衆院へくら替えして出馬。維新は堺市議だった黒田征樹氏、立憲民主党は前回比例当選した前職の森山浩行氏が立候補している。
公明党の堺市議に聞くと、こう話した。
「前回の衆院選までは、表向きは連立与党の自民党をやっていると見せつつ、維新へも支援していたのは事実です。それに吉村知事の人気、知名度が凄かったので、うちの支持者もそれに飲み込まれて維新に投じていた人もいます。全国的にもそんなことが許されていたのは大阪だけでしょう。しかし、今回は維新との協力関係もなくなり、まずは自分の党、プラス自民党って感じですね。維新が6つの小選挙区に候補を当ててきたので、負けてなるものかって雰囲気になっている」
また、立憲民主党の大串博志選対委員長は、こう語る。
「大阪16区は維新と自民党で票が割れるとこちらが浮上できる。関西は自民党、維新、そしてうちという構図。自民党の裏金議員がいる小選挙区ではさらに力が入る」
16区の隣りで、堺市の一部を選挙区とする大阪17区は、維新の馬場伸幸代表の地盤だ。前回は自民党候補を比例復活させないほど、大差で勝利した馬場氏は、地元では、選挙の強さで知られるところだった。だが、自民党の公示前の調査では馬場氏と自民党候補が互角。直近の調査になってようやくリードを広げてきた。
維新の国会議員秘書を務めたことがある選挙コンサルタントの藤川晋之助氏は、こう話す。
「初日から吉村知事が16区の応援に入ったのは、当然、17区の馬場代表の堺市であることも意識してですね。馬場代表が党幹部になれた理由の一つが、選挙に強い絶対的な地元の支援です。今回、馬場代表になって初めての衆院選であり、自民党にプラスして公明党とも全面対決する選挙。代表なので、過去の選挙とは違って応援に時間をとられ、選挙区に戻れる時間がほとんどないのもきついでしょう」
維新にとって鉄壁を誇った地盤、大阪での苦戦状況。藤川氏はこう続ける。
「維新は大阪で勢いをつけて、全国へと広がってきた。その大阪で苦戦しているということは、全国でもかなり厳しい選挙になりかねない。前回比で10議席以上減らすのかな」
(AERA dot.編集部・今西憲之)