起業を成功させる「仲間作り」はどうすればいいか。学生起業率日本一になった情報経営イノベーション専門職大学学長の中村伊知哉さんは、「イメージは『バンド』作り。異なるスキルや視点を持った3人が集まって、初めてスタートラインに立てる」とその秘策を語ります。
会社作りは「バンド」作り
起業において最も大事な要素の一つが、「仲間」です。
現代の若い世代、特に大学生たちは、仲間を作ることが非常に上手です。僕の目から見れば、彼らの仲間作りは「達人の域」。チャットで情報交換をして、趣味や「推し」の共有は一瞬です。
でも、起業の仲間は、“友達クラブ”ではありません。
じゃあ、どうすれば「起業仲間」を作れるのか。
私のイメージは、「バンド」です。
会社作りは「バンド」作り。私はそう捉えています。ギター、ベース、ドラムなど役割の異なるメンバーが集まり、それぞれが自分の音を出す。その音が響き合うか、そしてその音に観客が集まるかが重要です。うまくいかなければ解散して、新たな仲間を探す。そして、一緒に音を出す――。そんなプロセスが、起業に対するイメージです。
思えば学生時代、私はそんなことばかりしていました。音楽が好きでした。何度もバンドを組み、解散し、また新たな仲間を見つけて挑戦し続けていました。その経験が、のちにシリコンバレーを訪れた際、起業というものがまさにこの「バンドを組む」感覚で成り立つのだと確信させたのです。
ビジネス、テクノロジー、デザインの3者でスタートアップ
ビジネスにおいては、異なるスキルや視点を持った3者、つまりビジネス、テクノロジー、デザインの専門家が集まって初めてスタートラインに立つことができます。そして、その集まりがうまくいかなかったら、新たな仲間を探し、再度チャレンジすればいい。このような柔軟な思考が、起業における成功への鍵となります。
ここで求められるのは、こうした人材をどのように育成すればいいのか、という視点です。
現代の若者が築きつつある社会は、これまでの教育機関が100年近くかけて培ってきたものとは異なります。特にコロナ以降、その変化は加速しています。リーダーシップや競争、利益を追求するような考え方が、あまり大事だとは思われなくなってきているのです。
彼らが本当に大事にしているのは、友だちや仲間です。彼らの目標は「勝って全部を手に入れる」ことではなく、「みんなでシェアし、そこそこの幸せを手に入れる」ことです。これは、これまでの教育機関が育てようとしてきた「ストロングなリーダー像」とはまったく異なる価値観です。