新入生がメイン対象となった学生委員会メンバー募集パーティーの様子(写真/筆者提供)

大学を社会のプラットフォームにする

 1つは、投資ファンドです。「iU Z investment」という大学独自の投資ファンドを設立し、優れたビジネスプランを持つ学生や、将来有望な起業家に対して資金を提供する取り組みをしています。このファンドは、単なる資金にとどまらず、学生たちが事業を成功させるためのさまざまなサポートを包括的に提供できるようにしています。

 次に、人。iUの特長の一つとして、非常に多くの客員教員がいることが挙げられます。実に1000人以上の客員教員が在籍しており、学生の数を上回るほど。その多くは、実際に自身が起業家として成功を収めた経験を持っていたり、ベンチャーキャピタルに関わっていたりと、ビジネスの世界での実績があります。さらに、多くの客員教員は学生たちに対して資金を提供する立場でもあり、彼らの事業の将来性を見極め、出資を行うこともあります。

 ようするに、学生たちが客員教員陣に事業計画を相談したり、出資を依頼したりできる環境を整えることが主眼でした。例えば、教授に自分のアイデアをプレゼンテーションする機会があれば、そこから直接的な支援を受けられる可能性もあります。大学を学び舎でありながら、社会のプラットフォームにしたかった。そのために必要なのが、お金と人の交流だということです。

「全員起業」大学の思わぬ課題

 学内の様子も、少しだけ紹介させてください。

 起業をサポートするための授業やイベントが数多く用意されているのは、御想像通りです。例えば、「ピッチコンテスト」と呼ばれる、学生たちのアイデアの優劣を競う大会が、頻繁に開催されています。これに参加することで、彼らは実際のビジネスの現場で通用するかどうかを評価され、ナイスなアイデアには賞金や出資が提供されることもあります。こうした実利をともなうコンテストのフィードバックで、さらにアイデアを磨き上げることができるため、学生たちにとっては非常に有意義な経験となっています。

 しかし、そこには一つの課題もあります。

 それは、学生が意気揚々と退学してしまうこと! 

 起業が成功し始めると、彼らの何人かは大学を辞めてしまうのです。

「社長になったので、そちらに専念します」と言われることも珍しくなく、まさに嬉しい悲鳴です。歴史的にも、スティーブ・ジョブズのように大学中退で成功する起業家はあまたいるのでじゅうぶん理解できるのですが、それでも大学に留まってもらう仕組みを考えねばならない。それが喫緊の課題です。

 とはいえ、実際には多くの学生が大学の環境を利用しながら、「七転び八起き」で起業に挑んでいます。最初のビジネスがうまくいかなかった場合でも、事業を路線変更(ピボット)し、新たなアイデアに取り組むケースも日常茶飯事です。前回述べたように、こうした失敗経験から学生たちは学び、次のステップへと進んでいきます。

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