中村伊知哉(なかむらいちや)iU(情報経営イノベーション専門職大学)学長(写真/筆者提供)
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 なぜ、大学で起業を教えるのか。2020年4月に開学していまや学生起業率日本一になったiU学長の中村伊知哉さんは、「かつては『脱サラ』と捉えられていた起業概念が、今では『キャリアの新しい選択肢』として認められるようになった」とその最前線を語ります。

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起業資金をどこから調達するか

 私は現在、「全員起業」を謳う大学、情報経営イノベーション専門職大学(通称:iU)の学長をしています。

「起業」というと、多くの人はなによりもまず「資金が必要」と考えるかもしれません。しかし実際のところ、日本には多くの資金があり、お金の調達はなんとかなるものです。そのため、「お金がないから起業できない」というのは、必ずしも大きな問題ではありません。

 重要なのは、「どこから起業資金を調達するか」なのです。

 起業の際に、どんな資金源を選ぶかというのは大きなポイントです。なぜなら、資金というのは、そのお金を持っている人の影響力も付随してくるからです。その人の言うことをすべて受け入れる覚悟があるなら、その資金を受け取ればいいでしょう。ですが、無責任な場所から資金を調達すると、後で大変な目に遭うことがあります。

 ようするに、お金はモノではなく“人”だと言ってもいいくらいです。誰からお金を得るのか、その人の人柄を見極めることはとても重要です。

親を説得できるか、できないか

 特に、スタートアップの際に資金が必要であれば、まずは親や家族からの支援を考えるのが最善の選択肢です。

「親を説得できるか、できないか」。これは、起業家としての試金石にもなります。

 親でさえ説得できないプロジェクトだと、実社会からは厳しい洗礼を受ける可能性が高い。ですから親からの資金提供が難しい場合、次の選択肢はそれだけでもリスクが高くなっていることを自覚しなければなりません。

 実際のところ、多くの学生起業家は自己資金でなんとかしようと考えています。そのため、アルバイトをして資金を貯める学生も少なくありません。中には、大学入学時から起業のために投資を始めた学生もおり、起業への情熱や意志の強さには私も驚かされています。

 しかし、学生自身の資金のみに頼ることには限界がある。当然です。

 そこで、大学としても学生をサポートする仕組みを整える必要がありました。次のような仕組みです。

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