
現在、東京都現代美術館で、現代美術家・開発好明氏の都内では初となる大規模個展「開発好明 ART IS LIVE-ひとり民主主義へようこそ」が開催されている(11月10日まで)。
【写真】毎日新しいことが起こる展覧会 開発好明氏「観客の自発的な判断も作品の一部」
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どんな展覧会なのか、一言で表現するなら、“これまでに見たことも聞いたこともないような展覧会”と言えるのではないか。
入場口でミッション・カード
すべての来場者には入場口でウエルカム・キットが渡される。キットにはミッション・カードが封入されていて、一人ひとりに異なるミッションが与えられる。例えば“天井を10秒眺めてください”とか、“他の人とミッション・カードを交換してください”などと記載してある。
もちろんこれらのミッションは強制ではないので、やりたくなければやらなければいいのだが、思わず行動に移してしまう。
観客が主体となって客体としての絵画や彫刻を観賞する旧来型の展覧会をイメージしていると、意外に思えることの連続である。
展示室に入ると次の部屋に「投げ彫刻」という作品がある。観客がウエルカム・キットに同封されている発泡スチロールを展示室の一角に向けて思い切り投げ入れることによって積み上がった発泡スチロールの山を彫刻作品に見立てるものである。
「投票YES/NO」という作品では来場者はカードを1枚とって裏に書いてある質問を読み、YES と思えば青の付箋を、NOであれば赤の付箋を壁に貼る。回答できるのは一度のみで複数の質問が用意されている。例えば“民主主義は成功していると思うか”と問うものがあったりする。
「未来郵便局」と表示された青いブースからは、一年後の自分へ手紙を出すことができる。

「都会生活者のオアシス」と名付けられた作品は、毛足の長いファーで囲まれたベンチの中にやはりふかふかのファーが敷き詰められている休憩所のような空間であり、観客は、この中で寝転んで文字通り休憩ができるし、実際に展示会場でうたた寝をしている人も散見できる。
開発氏は「観客の自発的な判断も作品の一部」と語る。