発泡スチロールによる幻想的な彫刻作品「発泡苑」(撮影/桑原カズヒサ)

ひとり民主主義

 そのせいか、彼のことを常に社会への問いかけを行っている「政治的な」アーティストだと思い込んでいた。確かにメッセージ性が強く、人々のコミュニケーションを誘発しようとする多くの作品を発表してきたのは事実である。そんな開発氏を横浜市にある美術施設BankART1929でかつてディレクターを務めていた故池田修氏は、「ひとり民主主義」と名付けた。

 この名称について開発氏自身は「誰かがタグづけしてくれることで自分への認知が高まるのだから、それ自体はありがたいこと」としながらも「自分は、ひとり民主主義をしているつもりではない。美術も社会とかけ離れた場所に存在しているわけではなのだから、自分としては正しい方向に変化しているという意識しかない」と語る。さらに、「自分は生きているうちは変化し続けるだろう」とも。

 東京都現代美術館の学芸員、小高日香理氏は「キュレーターの間では早く開発さんの個展をという声が多かったが、作品や実践が多岐にわたるので、一言でコンセプトを表現するのが難しかった」と語る。

 展示会場を一周すると、ここにあるすべてを本当に一人の美術家が作ったのだろうかと思えるほど、作品群は多様性に富んでいる。そして観客はただそれを観賞するのではなく、展示室のあちこちで創作に参加し作品のかたちは日々変化する。

 だから、“これまでに見たことも聞いたこともないような展覧会“としか言いようがないのである。

(取材・文/桑原カズヒサ)

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開発好明氏プロフィール

かいはつ・よしあき/1966年山梨県生まれ、多摩美術大学大学院修了、アーティスト。2001年第4回岡本太郎現代芸術賞優秀賞。著書に「新世界ピクニック」(リトルモア)。11月10日(日)まで東京都現代美術館で「開発好明 ART IS LIVE-ひとり民主主義へようこそ」を開催中

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