「優秀」は上から目線

 さらにチーム内の会話では「優秀」という言葉は使わず、長年使ってきた「求める人物像」という言葉を「歓迎要素」に変更した。井上さんは、

「優秀の定義は人によって違いますし、『求める人物像』という言葉は上から目線にも聞こえます。我々は、我々を選んでくれた学生としか出会えない。選び選ばれる関係だからこそ、上から目線の採用はダメです。人材要件にマッチする人を歓迎する、という姿勢を大切にしています」

文系・理系問わず学生から大人気の味の素。幅広い学生から支持されている(photo 写真映像部・和仁貢介)

説明会は2倍速で見る時代

 コロナ禍を経て、会社説明会の形にも工夫を凝らす。従来の対面型に加えて、アーカイブが残る配信型を強化。研究活動やアルバイトなどの合間のちょっとした時間を活用してもらおうという狙いだ。

「タイパ、コスパが重視される時代です。できる限り多くの人に味の素を知ってもらいたいので力を入れています。学生たちはきっと2倍速で見ているんですけど(笑)、それでいいと思っています」(井上さん)

 同社は今年、採用ホームページを一新した。ページを開くと、まず明るい光が注ぐ樹木の映像が流れ、「人財の雑木林のような組織でありたいと考えています。だから、あなたのままで会いましょう」というメッセージが目に入る。

 井上さんは06年に同社に入社した。就職活動をしていた当時、味の素の採用コピーが「人財の雑木林」だったという。

「自分にも居場所があるように感じて入社しました。あれからおよそ20年が経った今、多様性やダイバーシティが求められる世の中になってきたので、思い入れのある言葉を使おう、と。そのままのあなたでいい、というメッセージは、今の学生の趣向とも合っているように思います」

(編集部・古田真梨子)

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