マイナビの2025年卒の大学生就職企業人気ランキングで文系5位、理系2位につける「味の素」。食品・農林・水産部門では、もちろん1位だ。文理問わず、学生から高い人気を集める理由はどこにあるのか。採用担当者に聞いた。

【写真】エントリー数は3年で約3倍 大人気の「味の素」採用担当者に聞いた”学生に支持される理由”

文系・理系問わず学生から高い人気を集める味の素。今春、早稲田大から16人、慶応大から13人、東工大から9人がそれぞれ就職している。(協力/大学通信 photo:同社提供)
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学生へのリーチは非常に広い

 味の素といえば、食品のイメージが強いが、人事部採用チーム長の井上泰輔さんは、「学生へのリーチは非常に広いです」と話す。

 同社の事業領域は幅広い。食品関連の事業とアミノ酸関連の事業、例えば動物栄養から電子材料、工場のエンジニアリングまで、学生の専攻をそのままアピールできる。

 さらに、採用部門も多い。25年卒は11職種で採用活動を実施。営業、財務経理、研究開発や生産などの職種に加えて、サステナビリティ情報開示職や、6年ぶりにクリエイティブ職も採用した。特に研究開発職では、学生がエントリーの段階で自分の専門性と入社後に興味ある分野も書くことができることも人気の理由だろう。

 売り手市場が続く中、大手志向の学生が増加していることもあって、同社のエントリー数はこの3年だけで、3倍近くまで伸びている。そんな中での採用スタンスについて、井上さんはこう語る。

「採用戦略とまでは言えないですけど、掲げているのは『採用した人も受け入れ組織も不幸にしない』という1点だけ。入社後に、こんなはずじゃなかった、というギャップを生まない採用を心がけています」

企業側には、SNS時代の就活に対応する工夫も求められている(photo 写真映像部・和仁貢介)

スマホひとつで企業の内実がわかる

 学生の情報の入手先は、会社説明会での採用担当の言葉だけではない。

「スマホひとつで、その会社のリアルな話を知ることができる時代です。だからこそ、真摯さと誠実さが大事だと考えています。素敵な方とご縁をいただくために、キラキラしたことや耳ざわりの良いことを語りたくなるけれど、それは一切しません。本当にリアルなところをファクトをベースに伝えていく。例えば、若いうちから海外に行きたい、という学生には、『これまでの事例では何年目くらいから。なぜなら高い専門性が求められるから』と実例をもとに説明しています」(井上さん)

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