AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
【写真】『「ビックリハウス」と政治関心の戦後史 サブカルチャー雑誌がつくった若者共同体』はこちら
「政治に関心がない」とされてきた「しらけ世代」。若者だった彼らはほんとうに政治や社会運動に関心がなかったのか? 伝説的サブカルチャー雑誌「ビックリハウス」(1974〜85)の本文を分析し、若者たちの“心情”と“運動”の実態、その意図せざる帰結を実証的に明らかにする一冊となった『「ビックリハウス」と政治関心の戦後史 サブカルチャー雑誌がつくった若者共同体』。富永京子さんに同書にかける思いを聞いた。
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雑誌が元気だった1980年代、「ビックリハウス」(74〜85年)は特別な存在だった。だが人気を博した同誌も85年に休刊する。社会学者・富永京子さん(38)は86年生まれだ。なぜ「ビックリハウス」をテーマに選んだのだろうか。
「マスコミの取材を受けていると『日本で社会運動が盛んにならないのは学生運動の影響ではないか』という仮説をもとに話したがる人が多いんですね。でも連合赤軍事件が集合的無意識として引き継がれたわけでもないし、68年から今に至るまで、社会運動がまったくなかったわけではありません。まずはきちんと歴史を紐解く必要があると思いました。そのためには社会運動の外にいて、近くから運動を見ていた人の反応が大切だと考えたので、ひとつ下の世代が読者だった、ビックリハウスを選んだんです」
同誌の読者だった60年代以降に生まれた若者は「しらけ世代」「新人類」と呼ばれ、政治参加や社会運動に対して冷笑的だと言われてきた。
「私の両親が60年代生まれなのですが、社会運動に対して無関心というよりも反発というか『意味があるのは認めるけどね』といった距離のとりかたです。そんな両親の姿勢から『これは何かあるぞ』と思ったこともビックリハウスを対象にした理由です」
今回、富永さんは「ビックリハウス」全130号の現物を集め、文字情報をテキストデータ化した。
巻末には1975年から85年のすべての号の頻出語リストが上位500語までまとめられ、収録されている。