「分析を始めると、戦後歴史社会学の中で研究されてきたトピックと同じような傾向が見られたのは驚きでした。具体的には『戦争(反戦、平和、運動)』『女性(フェミニズム、ウーマンリブ)』『ロック(対抗文化)』というトピックに着目して、それぞれの言及記事について計量テキスト分析・内容分析をおこないました。たとえば戦争は当時の若者にも大きな影を落としていたんです」
先入観なしに対象に向き合うことで見えてきた、「しらけ世代」の姿とはどのようなものだったのか。
「彼らはしらけたかったわけでも、政治に無関心になろうとしたのでもない。人権や平和といった理念を『おちょくり』たかったわけでもない。むしろ彼らが尊重していた自主性が読者共同体の参加メカニズムと組み合わさることで、『政治に無関心な若者文化』として結晶化してしまったのだと思います」
本を書きながら、富永さんが考えていたことがある。
「今の時点でよかれと思った行動が、意図せずに未来に悪い影響を与えてしまう可能性はあります。でも間違いを恐れて行動しないのは違うでしょう。ビックリハウスの読者たちは『人それぞれ』を大事にして論争を避けました。その点については、もっと議論をしたら良かったと思うし、今の私たちにも通じる問題だと思います」
(ライター・矢内裕子)
※AERA 2024年10月21日号