「踊る大捜査線」シリーズが盛り上がっている。9月16日からドラマが関東地区で昼間に放送され、28日には「踊る大捜査線 THE MOVIE」が、30日にはスピンオフ映画「容疑者 室井慎次」が放送された。10月5日には映画化第2弾「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が放送予定だ。
「踊る大捜査線」が日本の映画市場をひっくり返した
これらは、10月11日に公開される映画「室井慎次 敗れざる者」に向けての、フジテレビの盛り上げ策だ。90年代にコピーライターとして映画のポスター制作にも関わり、2000年代半ばには「踊る」シリーズの映画の制作協力会社ROBOTに在籍した筆者としては、思い起こすことが多々ある。ハッキリしているのは、「踊る大捜査線」が日本の映画市場をひっくり返したことだ。
90年代、邦画はどん底だった。このままでは洋画に押しつぶされて消滅するのではと心配したほどだ。そんな状況を一変させたのは、ドラマから生まれた1本の映画だった。
90年代の邦画がいかに惨憺たる状況だったか。日本映画製作者連盟の「日本映画産業統計」を見れば誰でも理解できる。今は興行収入(劇場の売り上げ)で映画の成績を示すのに対し当時は配給収入(配給会社の売り上げ)なのがややこしいが、配収のおよそ2倍が興収と考えればいい。
例えば邦画が最低だった1996年は配収230億円。洋画は403億円で約1.8倍だ。最新の2023年では邦画の興収が1480億円。1996年の配収を2倍にすると460億円だから、今の約3分の1だった。2023年の洋画は733億円で、1996年の配収の2倍が806億円だから、洋画は下がっている。
90年代は圧倒的に洋高邦低だったのが、現在は逆。この逆転の端緒となったのが「踊る大捜査線」だったのだ。