「うちも今後、中高生の留学も手がけたいと考えていたので、被害に遭った生徒さんを救う決断をしました」(田中さん)
田中さんは破綻した会社の代表本人に連絡を取り、被害状況を確認。そして、被害に遭った生徒たちの授業料を田中さんが私費で立て替える提案をしたと話す。
「破綻した会社の女性代表にはうちの会社で働きながら返済してもらう約束で立て替えました」(同)
説明と違うプログラム
女性代表からは、今年9月にカナダの学校に入学する高校生20人分の授業料の支払いができていないと聞いていた。ところが、田中さんが被害に遭った人を集めてオンライン説明会を開くと、被害人数は20人をゆうに超え、授業料だけでなく、ホームステイ代の未払いなども多数起きていることが判明した。田中さんは女性代表を信頼できなくなったため、会社で働くのもやめてもらったという。
「(事前に聞いていた)20人分の授業料約3千万円までは私の方でなんとかしましたが、これ以上はさすがに……」(同)
筆者が登記簿にあった日本事務所の住所を訪れるとそこはシェアオフィスで、利用者名が書かれたボードも確認したが、この法人の名前はすでになかった。SNSで見つけた法人の代表とおぼしき女性に取材依頼も出したが2カ月たった今も返事はない。
都内で子ども向け英会話教室を展開する会社の関係者はこう漏らす。「いろんな(留学斡旋)会社から『うちのプログラムをぜひ生徒さんに案内してほしい』と連絡がきますけど、安心して紹介できるところなんてほとんどないですよ」
事前説明で素晴らしいプログラムだと思ったが、現地で実際に行われている内容が説明時とかなり違うということもあったというのだ。
「説明会のスライドには、日本人と現地の子どもたちが一緒にディスカッションする様子が映し出されていました。ですが、紹介したうちの教室の子どもの親から、現地の子との交流は一切なかったと苦情がきたんです」
海外で行われるプログラムは親が同伴することもないため、子どもが現地での様子を話さない限り、問題があっても発覚しにくい。優良な斡旋業者を見つけるハードルは大学生や大人に比べるとさらに高くなる。(フリーランス記者・宮本さおり)
※AERA 2024年10月14日号より抜粋