留学斡旋をめぐるトラブルは後を絶たず、国民生活センターにも毎年300件を超える相談が寄せられている(写真:Getty Images)
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 留学を目指す若者の夢を踏みにじる斡旋業者はなぜ無くならないのか。本誌7月29日号に続く、海外留学トラブル記事の第2弾。AERA 2024年10月14日号の記事より。

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 2024年2月、カナダ留学に関するネットの掲示板に悲しみの声が寄せられた。

〈留学費用(学費や申請費、寮費などを含む)約141万円を持ち逃げされました〉(サイトから)

 取材によって見えてきたのは、日本人向けに留学斡旋(あっせん)事業をしていた会社の破綻劇だった。

 破綻した斡旋会社は日本人女性が代表を務め、20年ほど前から日本の中高生のカナダ留学をサポートしていた。斡旋先は主に現地の公立学校で、最近では業務を広げ、大学生もサポートしていたという。

授業料を運営費に流用

 ところが、経営が傾き、会社は破綻。この会社が斡旋していた学生の留学先の現地校の学費やホームステイ費用として支払ったお金が先方に渡っておらず、再請求されるケースが多数確認されている。この会社の内情を知る人物は「顧客から授業料などの名目で預かったお金を会社の運営費に充てていたようだ」と話す。

「破綻直前にこの会社を通して留学した生徒が、今もカナダに残っています。被害は相当なものです」と話すのはカナダ留学に詳しい「カナダクラブ」の大澤眞知子さんだ。一部返済がなされた家庭もあるが、すべての生徒の救済には至っておらず、夢を諦めて帰国した生徒もいるという。

 大澤さんの元に、この斡旋会社に関する相談が最初に入ったのは21年9月。息子の高校留学を斡旋会社に頼んだという家族は、渡航前の段階でサポート費用やオンライン英語コースの代金と称して87万円超を支払わされ、学費やホームステイ代金はこれとは別に請求された。入学したのはカナダにある公立高校。やっと留学できたと安堵(あんど)したのもつかの間、ホームステイ先でハラスメント行為をしたという理由で、入学して数週間で退学となった。しかし、両親に入った連絡は全て斡旋会社からのもの。連絡を受けた翌日には帰国させられたという。

 両親が帰国した息子に話を聞くと、ハラスメント行為をした覚えはないという。実は大澤さんが受けたこの会社に対する相談の中には、今回と同じようなケースが他にもあった。

 そんな中、日本人留学生の救済に乗り出したのがバンクーバーを拠点に留学斡旋業を営む「JPカナダ留学センター」の代表、田中覚弘さんだ。

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