【長いスパンで紅葉を愛でる】わたらせ渓谷鐵道 桐生~間藤/通称「わ鐵」。全長約44キロを、渡良瀬川の渓谷に沿い、約1時間半かけのんびり走る。木造の「渋い駅」も多く、途中下車もオススメだ

 スイッチバックとは、列車が坂路を上るために進行方向を変えながら進む運転方式。箱根登山電車は計3回行いながら、険しい箱根の山々を上っていく。しかも、沿線は急カーブが多く、列車は車輪を激しく軋ませながら曲がる。車両、スイッチバック、急カーブ……。箱根登山電車は、鉄道の魅力がぎっしりつまった「幕の内弁当」と、笑う。

 秋の鉄道旅の魅力は?

「ワクワクするけれど、だんだん季節が冬になっていくので、ちょっとだけ寂しくて。郷愁というか、車窓を見ているとキュンとします」

 吉川さんが最後に挙げる「わたらせ渓谷鐵道」は、そんな鉄道の一つ。桐生(群馬県桐生市)~間藤(まとう、栃木県日光市)間、約44キロ。渡良瀬川の渓谷に沿って走る第三セクターだ。

「とにかく『渓谷鉄道』なので紅葉がとても素晴らしくて」

 列車は、木々の間から見え隠れする渡良瀬川に沿い山間へと進んで行く。始発から終点まで、高低差は約550メートル。紅葉のピークが各所で異なり、長いスパンで紅葉を楽しめる。

 そして、木造の「渋い駅」が多く、途中下車もオススメだという。中でも「神戸(ごうど)駅(群馬県みどり市)」。黒塗りの木造駅舎で、駅に隣接し、かつて東武鉄道で活躍していた特急車両「デラックス・ロマンス・カー」を活用したレストランもある。

 秋の山あい、高い空に風が吹く。

「空気もおいしいです」

(編集部・野村昌二)

吉川正洋さん(よしかわ・まさひろ)/お笑いコンビ・ダーリンハニーのメンバー。鉄道愛と豊富な知識で、さまざまな鉄道番組に出演している(写真:太田プロダクション提供)

AERA 2024年10月14日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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