写真左=東京大学医学部6年・河野ゆかりさん(撮影=写真映像部・佐藤創紀)、右=広島大学医学部6年・宇江美沙希さん(本人提供)
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 医学部生というと、忙しいイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。1日のスケジュールは? 趣味や気分転換の方法は? 医学部生のリアルな毎日を、現役医学部生2人に聞きました。発売中の『医学部に入る2025』(朝日新聞出版)より紹介します。

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勉強も趣味も目いっぱい挑戦

 東大生チームと芸能人チームがクイズで競い合うテレビ番組「東大王」(TBS系列)でおなじみの河野ゆかりさん(東大医学部6年)。臨床実習中の現在、いつもかばんに入っているモノとして真っ先に挙げてくれたのは、ポケットサイズのメモ帳だ。

「実習中は、患者さんから話を聞くこともありますし、指導医に簡単な勉強会をしてもらえることもあります。そこで聞いたこと、気付いたことを書き留めるメモ帳は手放せません」

 クイズとは無縁だった河野さんが「東大王」の出演者募集に応募したのは「コロナ禍で気持ちがくすぶっていた」2年生のときだ。

「勉強はできても、一般教養や同世代の流行はわからない。そういう自分が嫌だったんです。クイズ番組に出ることが幅広い知識を身につけるモチベーションになれば、と思って応募したのですが、チームメートやスタッフさんとの出会いという、知識以上に価値のあるものも得ることができました」
 

「クセが強くて、面白い」東大王チームのメンバーと。クイズを通じて勉強とは違う頭の使い方も学んだ(写真=本人提供)

医学以外の世界も視野を広げてくれる

 東京大学では、2年生の夏休み前に行われる「進学選択」までの間、学生全員が教養学部に所属し、さまざまな分野の学問に触れる。

「1、2年次は医学の勉強ができず不完全燃焼気味でしたが、今にして思えば、医学部では習えないことを学んだのは、貴重な経験でした。経済学の授業を取ってからはニュースの理解度も上がりましたし、『東大王』でもよく出題される世界遺産や世界の文化に興味を持ったきっかけは、大学の授業だったかもしれません」

 最近は卒業後の研修先を決めるマッチングや、半年後に迫った医師国家試験の準備も始まり、日々のタスクはさらに増えた。それでも移動時にはアプリを使った暗記学習、帰宅前の隙間時間にはジム、休日は旅行やラーメンの食べ歩きと、「やりたいこと」のための時間は工夫して作り出す。今、熱中しているのはワインの勉強。7月にはワインエキスパートの1次試験、秋には2次試験に挑戦する。

「小さなころから母に『すべての経験は財産になる』と言われて育ちました。患者さんに寄り添える医師になるには、勉強して知識を蓄えるだけでなく、医学以外の世界にも目を向けることが大切。趣味の時間は私の視野を広げることにもつながっていると思います」

河野ゆかり/2000 年生まれ。兵庫県出身。19 年、現役で東京大学理科III 類に合格。21 年から、TBS系列のクイズ番組「東大王」に出演した。

 

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