医ケア児の預け先が足りない

 研究にあたって、実態を把握するために調査を呼びかけました。医療的ケア児(者)を育てる家族ならQRコードから誰でも参加で、子どもの年齢の制限もありません。「福祉サービスが不足しているために、どのような困りごとがあり家族の負担になっているのか」を総合的にまとめる研究です。

 調査前から「短期入所施設が足りないために家族が休めない」という回答は予測していましたが、結果は、短期入所だけではなく「とにかく預け先が足りない」だったことに驚きました。特に共働き家庭にとって子どもの預け先は死活問題です。

 産休を取った後に、医療的ケアが必要な赤ちゃんが生まれた場合、育休が終わっても保育園等の預け先がなければ職場復帰はできません。また、最近では「18歳の壁」と言われる特別支援学校を卒業した後の日中の居場所の不足も深刻な問題です。

 育児のスタートラインとも言えるところから、18歳を超えた後の居場所まで、本当にすべての預け先が足りていないようです。共働き家庭が増えた現代では、医学の進歩により、医療的ケアが必要な赤ちゃんも増えています。どうすれば折り合いをつけることができる社会になっていくのか、分析を進めながら必死に考えてみようと思っています。

AERAオンライン限定記事

著者プロフィールを見る
江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

江利川ちひろの記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
若い人にも増えている「尿漏れ」、相談しにくい悩みをフェムテックで解決!