更年期が終わるとすぐに老年期。体はますます老化していく。更年期をどう健やかに過ごすかで老年期の質も変わってくるはずだ(写真:鈴木愛子)
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 更年期以降、女性は健康とどのように向き合えばいいのか。長年、婦人科医の対馬ルリ子さんと「女性ホルモン塾」を開いてきた吉川千明さんと、フェムテックに詳しい北原みのりさんが語り合った。AERA 2024年10月7日号より。

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吉川千明:更年期が終わったら急激に老化が始まるのよ。更年期が怖いとか、HRT(ホルモン補充療法)が怖いとか言ってる場合じゃない。今、私のテーマは老年期なの。血圧が上がる、動脈硬化が進む、肝機能が落ちる、免疫系の疾患が出る、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)にもなるし、糖尿病のリスクも上がるし、認知症が進む。骨盤を支える骨盤底筋が緩んでくるから子宮脱も起きるし、尿もれもするようになるけど、尿がもれるっていうことは、便ももれる。誰も言わないだけ。私も血液検査をしたら弱いところが出始めていました。性差が分かる、女性の体をトータルに分かる内科、婦人科が必要だって実感しています。

北原みのり:千明さん、ジムにも行き始めたんですよね。

吉川:そう。なかなか筋肉ってつかないんだけど、1キロ増えたかな。私は死ぬ1週間ぐらい前まで自分でトイレに行きたいと思ってる。日本だと最後までトイレに行くという考え方がないでしょう? 最後まで尊厳を守って、老人として大事にされる生き方が絶対にあるはず。

北原:イギリスに行ったら、薬局やスーパーに大人用のオムツがあまり売られていない。なぜ?と聞いたら、「オムツはプロの介護士が使うものでしょ」と言われました。高齢になったらオムツをはくのが当たり前、というのは刷り込みかもしれないですね。排泄(はいせつ)行為は人間の尊厳に関わることですが、まだまだ日本では意識が追いついていない。

吉川:フランスも売ってなかったですよ。

医療は長い間男性中心

北原:今の日本って、長生きするのが怖いという女性が増えていると思うのですが、みんなで楽しく年を取れば怖くないですよね。医療は長い間男性中心だったから、まだ女性の健康については理解されないことも多い。性差の医療を深めて、政治も医療も行政も、みんなで女性の健康について真剣に考える社会にしていきたいですね。中高年女性が幸せじゃない社会って未来がないと思うんですよ。腟の健康について、女性自身ももっと真剣に考えていいと思う。誰もが通る更年期を、いろんな知恵を合わせて乗り越えていきたい。

吉川:私も最初から抵抗がなかったわけじゃないんだけど、対馬先生と出会って、勉強をして、事実を知ることができて本当によかったと思ってる。もっと女性は、より良く、いい思いをしていいんだ、楽をしていいんだって思った方がいいのよ。

(構成/編集部・大川恵実)

AERA 2024年10月7日号より抜粋