更年期、心身のさまざまな不調に悩まされる女性は多い。治療するうえで、ポイントとなるのが女性ホルモン「エストロゲン」低下の時期だという。AERA 2024年10月7日号より。
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東京医科歯科大学の寺内公一教授は、ホルモン低下の2段階の「時期」に注目すると、治療の目標を置きやすいと話す。
まず1段階目は、閉経前後の5年ぐらいの間に起こる「揺らぎの時期」。エストロゲンの分泌低下は一直線に起こるわけではなく、激しく揺らぐようなイメージだという。
「女性ホルモンの分泌が低下してくると、脳から『もっとホルモンを出せ』という命令が出てくるんですね。そうすると、卵巣が急発進のような感じになって、慌ててエストロゲンを出そうとする。車にたとえると、ガス欠みたいなもので、車が止まりそうになったり、急発進したりというガタガタ運転になる。ホルモン補充療法(HRT)にはそうした揺らぎをなだらかにする効果があります」
2段階目は、エストロゲンが枯渇した状態が長期間続く時期。この段階に入ると、将来生じるリスクが高い疾患を予防するのに、HRTを使うことになる。リスクとは、腟や尿路の萎縮症状、コレステロール増加による動脈硬化、骨粗鬆症による骨折、認知症などが含まれる。
寺内さんによると、HRTはここ20年ほどで少しずつ発展してきたという。最新のHRTでは、パッチやジェルのエストロゲン製剤である「経皮吸収型エストラジオール」と、もともと女性の体内に存在している黄体ホルモンと同じ成分を使う「天然型プロゲステロン(黄体ホルモン)」の組み合わせによる治療が広く行われている。
「HRTは従来の懸念点として、乳がんのわずかなリスク上昇が指摘されてきた。それが21年9月に天然型プロゲステロンが更年期障害の適応を持つ日本で初めての黄体ホルモン薬として認可され、安全性がより高まった形で治療が可能になりました」(寺内さん)
(ジャーナリスト・古川雅子)
※AERA 2024年10月7日号より抜粋