最近「AERA dot.」に掲載された記事のなかで、特に読まれたものを「見逃し配信」としてお届けします(この記事は9月8日に「AERA dot.」で掲載されたものの再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。
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家を購入した世帯の多くが利用する住宅ローン。日本銀行の追加利上げによる影響は必至だが、専門家はそれでも変動金利のままがいいという。経験則から導いたその理由とは。
日銀は3月に開催した金融政策決定会合で「マイナス金利政策」を解除し、17年ぶりに利上げを実施した。さらに7月末には、それまで続けてきた長期国債の買い入れを減額するとともに、短期金利の誘導目標を0〜0.1%程度から0.25%程度に引き上げることを決めた。
利上げはローン金利に影響
住宅ローン金利の行方について探る前に、まずは住宅ローンに関する必要最低限の基礎知識をきちんと身につけておく必要があるだろう。そもそも住宅ローンは、①全期間固定金利型、②固定金利期間選択型、③変動金利型に分類される。
①は、当初に定められた金利が完済までずっと適用され、②は、一定期間は当初に定めた金利を適用し、以後はその時点における金利水準に基づいた変動金利型に移行するか、再び固定金利期間を設定するかを選択する仕組みだ。残る③は、一定期間ごとに折々の情勢を踏まえて適用金利が見直される。
今が低金利で将来的に上昇する可能性が高いなら、ローンを借りる側は①を選びたくなるが、逆に銀行側からすれば、そのような局面で①で借りられるのは不都合だ。そこで、同じ時期に設定された各タイプの適用金利を比較すると、一般的には③が最も低く、①が最も高くなっている。足元まで国内では長く低金利が続いてきたため、住宅ローンにおける人気の中心は①だった。
続いて知っておくべきは適用金利の決まり方で、固定金利型の場合は長期金利(10年物国債の利回り)の水準を参考にしている。10年物国債は日々市場で取引されて利回りが変動しており、その推移には日銀の金融政策が大きな影響を及ぼしている。長期国債買い入れの減額は長期金利の上昇要因となりうるが、それよりも大きな影響を及ぼすのが実は短期金利の情勢である。
一方で変動金利型の適用金利は、短期プライムレート(銀行が最優良企業への1年以内の貸し出しに提示する最優遇金利)を基準に決定している。この短期プライムレートは、日銀の政策金利(短期金利の誘導目標)に連動するようになっている。つまり、固定金利型と変動金利型のどちらに対しても、今回の日銀追加利上げは影響を及ぼす可能性があるということだ。