「奇をてらった」進次郎氏の目玉政策
そして当の進次郎氏は、同じ40代で若手の小林鷹之前経済安保担当相の出馬表明を機に「このままでは党内での自分の存在感が薄れてしまう」と危機感を抱き、出馬を決意したというのが大下氏の見方だ。
進次郎氏が総裁選候補に躍り出ると、持ち前のスター性や若さゆえの刷新感により、世間の期待を一手に集めた。立候補を表明した会見で、「知的レベルが低いのでは?」という記者からの質問に当意即妙に応じた様子は、SNS上でも拡散され、進次郎氏の存在感を高める契機となった。
だが、公開討論会などが開かれ選挙戦が進むにつれて、その勢いは失速した。メディア各社の情勢調査では、石破氏と高市氏がポイントを上げる一方で、進次郎氏は伸び悩んだ。
その原因として大下氏が真っ先に挙げるのが、「討論での実力不足」だ。進次郎氏は、自分の主張を力強く訴える演説は得意な一方、瞬発力が問われる論戦は苦手で、テレビ討論会のような場に出ることは極力避けてきたという。総裁候補同士の討論に臨む進次郎氏の様子には、「質問に答えていない」「迷言だ」などと批判が相次ぎ、失望感が広がった。
さらに、立憲民主党の新代表として論客で知られる野田佳彦元首相が選ばれたことで、自民党内に「進次郎には太刀打ちできないのでは?」という不安がふくらんだことも、失速の大きな要因になったと考えられる。
大下氏は、「選択的夫婦別姓の導入」を目玉政策として打ち出したことも失敗だったと指摘する。
「伝統的な家族観を重視する保守層の党員からの支持が、一気に進次郎氏から高市氏へと流れました。解雇規制の緩和もそうですが、全体的に奇をてらった印象があります。菅義偉元首相や斎藤健経済産業相をはじめ、そうそうたる面々がブレーンとしてついていたのに、政策面の詰めは甘かったなと思います」