
ウクライナはNATO加盟国ではないので、米国の核の傘で守られているわけではない。ロシアが核攻撃をしたとしても、自動的に核による報復の対象にはならない。しかし、NATOとしても見過ごすわけにはいかないので、核を使うかどうかはともかくとして、何らかの攻撃に踏み切らざるを得なくなる可能性が高い。
これに対してベラルーシがウクライナに核攻撃を行った場合には、報復の対象が当面ベラルーシ領内に限られるかもしれない。「NATOとしても、世界規模の核戦争に発展しかねないロシア領内への報復はためらうのではないか」と期待することができるわけだ。
■欧米を疑心暗鬼に
ただ、プーチン氏の現時点の狙いは、実際に核を使いやすくするというよりは、「ベラルーシを盾にして、ロシアは本当に核を使うかもしれない」と欧米を疑心暗鬼にさせることにあるのではないか。そのことによって、ウクライナへの武器支援をためらわせる。少なくとも、ペースを遅らせるということが目的のように思われる。
核をちらつかせることで敵対する相手の行動を変える、つまり抑止するためには、「こいつは本当に核を使いかねない」と思わせる必要がある。
この点で、ロシアのこれまでの脅しは、既に通用しなくなっている。
プーチン氏は昨年2月24日の開戦演説で、次のように警告した。
「この事態に外部から干渉しようとする者に、ロシアは直ちに対応して、歴史上なかった事態に至るだろう」
「必要な決定はすべて下された。私の言葉を聞くよう望む」
要は核兵器をちらつかせて、欧米にウクライナへの軍事支援を思いとどまらせようとしたわけだ。
実際、開戦後しばらくの間は、欧米の支援はおっかなびっくりという感じが否めなかった。兵士が担いで運用する比較的小型の対空ミサイルや対戦車ミサイルが主体で、ロシアによる侵攻を食い止めるのが狙いだった。
しかしその後、米国は高機動ロケット砲システムハイマースを供与。ウクライナが被占領地を取り返すのに大きな力を発揮した。そして今や、欧米の新鋭戦車がウクライナに到着しようとしている。