「ブランド米は高い価格で販売するので、味と見た目、両方ともよくなければならない。その年の条件によって品質にばらつきが出るようでは厳しい。そのため、高温耐性は必須という感じです」
毎年、日本穀物検定協会は米の産地品種ごとに食味ランキングを発表している。23年産は144の産地品種が評価され、43が最上位の「特A」を獲得。その半数以上、25の産地品種が高温耐性品種だった。
食味の違い
例えば、山形県が開発したブランド米「つや姫」は14年連続、「雪若丸」は6年連続で特Aと評価された。
「どちらも高温耐性の品種です。つや姫と雪若丸は、粘りはそこそこある。普通くらいの硬さがつや姫で、もっとしっかりしたほうがいいという人には雪若丸がおすすめです」
浅見さんによると、最近の食味のトレンドは、「もっちりしていて、普通の硬さ」。ご飯として食べておいしいうえ、さまざまな料理に合わせやすい、「王道」の米だという。
ただ、覇権争いは熾烈だ。高温耐性品種だけでも、「サキホコレ」(秋田県)、「つや姫」(山形県)、「新之助」(新潟県)、「富富富」(富山県)、「いちほまれ」(福井県)、「元気つくし」(福岡県)、「さがびより」(佐賀県)、「にこまる」(長崎県)など、ライバルがひしめく(かっこ内は主な産地)。
「『王道』の米は強敵も多いですが、人気の食味なので購入者も多い。産地はそれぞれ、王道の食味を目指して、勝負できるブランド米を出すことに意欲的です」
米の味こだわりは「ほぼ男性」
消費者の反応はどうか。意外なことに味にこだわって米を購入するのは、浅見米店の場合、「ほぼ男性」だという。
「女性は米を『値段』で買うケースが多い。うまい米を食いたいから米は俺が買うという男性がよく来ます。2キロずつ4、5種類購入して、料理に合わせて炊く人もいますよ」
一方で「コシヒカリなら間違いない」という客も高齢者を中心に多いという。コシヒカリは現在も全国の約3割の水田で栽培され、作付面積は日本一だ。
高温耐性品種の作付面積は年々増えている。昨年は全体の14.7%を占め、19年と比べ4.8ポイント増えた。我が家でもつや姫を食べたことがあるが、美味だった。
コシヒカリ「一強」が終わり、「群雄割拠」の時代がやってきそうだ。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)